2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年2月24日

 今、私の手元に1通の親書の写しがある。あて先は、Prime Minister of Japan, Mr. Yoshihiko Noda(日本国 総理大臣 野田佳彦 様)。差出人は、チベット亡命政権の日本代表を務める、ダライ・ラマ法王 日本・東アジア代表のラクパ・ツォコ氏だ。「総理閣下へ チベットの悲劇的な状況について、火急なご関心をお寄せいただきたく、本状を差し上げます」との一文で始まっている。

沈黙する日本政府、国会、有力政治家ら

 便箋2枚にびっしりとしたためられた中には、チベットの現状が切々と綴られ、こう締めくくられていた。

 「チベットの状況は緊急かつ劇的なものとなっております。国際社会の皆様が、一刻も早く、強いメッセージをもって答えてくださることを切望しているのです。そのメッセージは、深い絶望の淵にある本土のチベット人らに、希望と啓示、生きる勇気を与えることとなるでしょう。閣下におかれましては、ジュネーブで開かれる国連人権委員会にて、チベットの問題への関心を表明してくださいますよう、お願い申し上げます」

 同じ文面は、玄葉光一郎外務大臣に宛てても出されている。すでに1週間が過ぎたが、日本国政府からは未だ正式な声明等は出ていない。

 想像してみてほしい。油をかぶり、飲み、そして自らの体に火を放ち、中国共産党政府の非道に抗議する――。チベットの地では、それほど壮絶な抗議行動に出た人が、この1年だけでもすでに20名を超えたのだ。「人数」で語るべきことでないとはいえ、隣国でおきている、この衝撃的な事実にあらためて驚かずにいられない。当局による市民への武力弾圧、厳しい監視も依然続いている。にもかかわらず、わが国の政府、衆参両院の議会、有力政治家らは、例によってこの問題を黙殺し続けているのだ。国民としてこの状況を何とすべきか?

“戒厳令下”にあるチベット

 日本の政治家らのことに詳しく触れる前に、依然続く「チベットの悲劇的状況」をお伝えしよう。先月末に、当コラムで僧侶らの焼身抗議の背景等について書いた直後、今月3日には、四川省カンゼ・チベット自治州のセルタ(色達県)で、同日に3名ものチベット人が焼身抗議を行なった。未確認情報ではあるが、うち2名は60代の人との報告があった、とチベット亡命政権は発表している。

 現在、ラサを中心としたチベット自治区は言うに及ばず、四川省の西半分、青海省全域を占めるチベット全土へは、外国人はもちろんのこと、中国国内の観光客の立ち入りも厳しく制限されている。チベットは事実上の“戒厳令下”にあって封鎖されており、外からの闖入者などないにもかかわらず、おもな都市の街路、寺院の周辺は、夥しい数の武装警察や軍人で埋め尽くされているという。


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