暴動から4年
チベットの現実、日本への思い(前篇)

ダライ・ラマ法王 日本・東アジア代表ラクパ・ツォコ氏に聞く


有本 香 (ありもと・かおり)  ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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奇しくも、あの「ラサ騒乱」から丸4年となる3月14日、ダライ・ラマ法王 日本・東アジア代表のラクパ・ツォコ氏を訪ねた。

 思えば4年前の今頃、日本のマスメディアは、それまでの「沈黙」を破り、まるで堰を切ったかのように、連日、チベット情勢をトップ扱いで伝えていた。中国政府に対し、世界中から非難の声があがり、北京五輪の聖火リレーの場が「フリーチベット」のアピールの場と化した。日本でも、長野での聖火リレーが「異様な場」と化した、あのときのことを、ご記憶の向きも少なくないことだろう。

 再びオリンピックイヤーが巡ってきた。4年がたったにもかかわらず、チベット情勢は好転するどころか、深刻さを増すばかりだ。本コラムでも再々書いたが、2009年、昨年、今年と相次いでいる焼身自殺は、わかっているだけで、すでに26件にものぼっている。

 そんなチベットの現状と今後のこと、日本とのかかわりあいについて、通算の日本滞在歴が20年を超えたラクパ・ツォコ代表に聞いた。

「野田総理への親書」の返事は?

 まず、本コラムの前回の稿で、大きな反響を頂戴した「チベット亡命政権から野田総理への親書」のその後について聞くところから話を始めた。親書を出してからちょうど1カ月、何らかの「返事」はあったのか?

ダライ・ラマ法王 日本・東アジア代表
ラクパ・ツォコ氏 (撮影:編集部)

 「とくにお返事はいただいておりません。しかし私は、野田佳彦首相はじめ日本の閣僚、政治家の皆さん方は胸の中に、チベットのことを留めてくださっていると信じています」

 と、ラクパ代表。

 一日本人としては、苦笑するしかなかった。「胸に留めているだけ」では政治とはいえない。しかし残念ながら、それが私たちの政府の現状だ。ただし、ラクパ代表が、「野田総理は理解してくださっている」と繰り返しいうのにはワケがある。

 実は野田総理は、4年前の4月23日、野党議員として当時、衆議院外務委員会で「チベット問題」について質問を行なっているのだ。高村正彦外務大臣(自民党)に対し、「『チベット問題は中国の内政問題だ』という(日本政府の)見解について、私(野田)は、国民感情としてはそうではないと思う。人権という観点からすると、これは間違いなく国際的な問題であり、国際社会が注視しているということを、繰り返し、中国にお伝えしていくべきではないか」という趣旨の発言をしている。この至極真っ当と思える野田発言が、今日どのように変化したかはまた後で触れたい。

 あらためて、ラクパ・ツォコ代表に、チベットで相次いでいる焼身自殺の背景について聞いた。4年前から今日まで、チベットは一体、どういう状況であったのか?

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「チャイナ・ウォッチャーの視点」

著者

有本 香(ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

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