チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年3月23日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

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30人にのぼるチベット本土での焼身自殺者
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 3月17日、とうとうチベット本土での焼身者が30人にものぼる事態となってしまった。(くわしい経緯は別表参照)。もはや、苛酷という言葉さえも軽く思えるようなチベットの現状と、その背景について、チベット亡命政府の日本における代表を務める、ダライ・ラマ法王 日本・東アジア代表のラクパ・ツォコ氏に聞いた。その後篇をお届けする。

 前篇では、2008年以降、中国当局によるチベット人への弾圧は厳しさを増し、「チベットは巨大な監獄と化した」ことに触れた。ことに、宗教施設や僧侶らへの弾圧が厳しさを増したと伝えられ、それが今も続く焼身の原因となっているのだが、その発端は、中国政府が、秘密裏に開いた会議で決められた方針にあったとされる。

「元凶はチベット仏教だ」

 「2008年にチベットの50カ所以上で、命がけの抵抗が起きたことに中国政府はずいぶん驚いたようなのです。そこで、北京で対策会議がもたれ、『さらに厳しい弾圧を』との方針を出したといわれます。ことに、チベット人の抵抗の根は、ダライ・ラマ法王とつながるチベット仏教にある。これを徹底的に叩け、との指示が出たと…」

 ラクパ・ツォコ代表が語るこの情報は、チベット亡命政府関係者のみならず、複数の中国人筋からも聞かれる話だ。

 ところで、よく言われることなのだが、中国共産党は憲法のなかで、「信教の自由」を保障している。しかし、チベットでの実態のほか、イスラム教徒の多い、新疆ウイグル自治区での現状を見る限り、これが「建前」に過ぎないことは明らかだ。このことは、ダライ・ラマ法王自身が再三再四指摘し、「憲法で謳っているとおりに宗教的な自由を」と主張してもいる。ところが、一向に実現しない理由としては、「中国では、憲法よりも上に共産党があるからだ」との砕けた説明がされることが多い。

 神仏よりも中国共産党の思想が上位、という原則を徹底すべく、近年、僧侶らにはことさら厳しい「再教育」が行われたという。日本の新聞等でも伝えられたが、ダライ・ラマ法王の写真を踏め、という「古典的な手口」での再教育も依然行なわれていたようだ。筆者が2009年の秋にインドで会った、アムド(現在の青海省)から逃げてきたばかりの僧侶は、その様子を次のように語った。

 「今では、田舎の小さな寺にまでも監視役が送り込まれることが珍しくない。警察の巡回、尋問、僧侶らの自室の家探しも頻繁に行われます。田舎のお寺の僧侶らを、まるで危険なテロリストか何かのように扱おうとするのですよ。自室の家探しを拒んだら? それどころか、少々口答えしただけで暴力を振るわれるし、連行されることもありますよ」

国際社会は何ができるのか?

 ところで、読者の皆さんは、チベット本土で焼身が相次いでいる現状に際し、在米、在インドの亡命チベット人らが、国連による調査団の派遣を要求して、ニューヨークの国連本部前でハンストを行ってきたことはご存知だろうか。

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