7月から始まる再生可能エネルギー固定価格買取制度。その肝となる買取価格と買取期間の決定が近づいてきている。
4月25日の調達価格等算定委員会で示された委員長案は、メガソーラー42円×20年、20kW以上の風力23.1円×20年、20kW未満57.75円×20年、1000kW以上の中小水力25.2円×20年など、各業界団体の要望に大筋で沿ったものだ。
買取価格は基本一律(太陽光以外上限20円)とされていたのが、発電方式ごとの収益に配慮する形になったことで、物議をかもした東京電力社長の発言「値上げは権利」にも似た「高値は権利」になってしまったかのようにみえる。買取は結局国民負担であり、国民が支えるビジネスであることを忘れていないだろうか、
このまま突き進めば、一種の「バブル」となり、あるべき業界発展が阻まれる可能性もある。自然エネルギーの専門家が、見えてきた問題点を指摘する。
国民負担で
失敗風力を救済?
「意義はわかるが、苦しいのでそのぶん高くというのは、趣旨と違う」
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7月から始まる再生可能エネルギー固定価格買取制度(図参照)。肝となる買取価格と買取期間は、5月の決定を目指し、5人の委員からなる調達価格等算定委員会において急ピッチで議論が進められている。
3月19日に開催された、第3回委員会では、風力、太陽光、地熱発電の各業界団体などがヒアリングを受けた。自治体による既存の風力発電設備も固定価格買取制度の対象にしてほしいという要望に対し、委員が指摘したのが冒頭のコメントである。
日本風力発電協会の資料には、「自治体の風力発電事業は非常に厳しい環境」「自治体は先駆者である」、だから「既存風力発電設備に特段の配慮をお願いしたい」とある。
確かに黎明期を支えた山形県旧立川町や高知県町などの先駆事例もある。しかし、北海道の旧恵山町三セク(風速でマイルとメートルを間違える)、京都府企業局太鼓山(落雷被害甚大)など、失敗事例は枚挙に暇がない。その多くは、代理店やコンサルディング会社任せにしたためだと筆者は考える。救済ありきではなく、後に生かすためにもまず失敗原因を明確にすべきではないか。
同時に協会は民間の既存風力設備も買取制度の対象とするよう求めている。実際に民間も多くが苦戦している。黎明期の知見不足(山岳地形の乱流予測技術、世界でも有数の強さの冬季雷など)は否定しない。
しかし、大切な事が抜け落ちている。民間事業者は、自社の風車の発電量を公開していない。財務内容、故障履歴などの開示もない。民間の既存風力は初期投資に約3分の1弱の補助金が出ており、その申請の際の事業計画書では採算が取れることを宣言しているのだ。
どんなビジネスでも常にリスクは伴う。固定買取という国民が負担する制度で、ある種の救済を求めることは、厳しく言えばプロでなかったことを自ら認めることである。大前提として、発電量と財務内容、故障などの情報開示を強く求めたい。
誰のための固定価格買取か
比較的リスクが低く、多くの新規参入企業が出てきている大規模太陽光発電(メガソーラー)も異常事態に陥っている。