2024年4月19日(金)

渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年5月2日

 ティーパーティ系の有権者はもとより広く「反ロムニー」の共和党有権者の間では、FOX NEWSなどの保守メディアを含む主流メディアへの不信感や反発が、今回の予備選過程を通して強く見られた。ギングリッチの口癖は、「私が候補者になったら、オバマと司会者なしの一対一の対決のディベートをしてみせる」だった。ネットワークのアンカーマンなどジャーナリストが司会者になる、現行の大統領選挙討論の方法では、言いたいことが言わせてもらえず、揚げ足取りの質問しかしない、という苛立ちが爆発した発言だった。

 また、ポールについては極端に扱いが小さいか、公正で正確な報道をしないという抗議が支持者内で常にあった。なるほど、アイオワ党員集会直前の「デモイン・レジスター」(12年1月1日)に掲載された各候補者プロフィールの記事を見ると、「ポールを嫌っている層:高齢者、ティーパーティ支持層、強固な財政保守派と強固な社会保守派」「ポールを支持する層:若年層、男性、所得と学歴が高くない層」とあり、ティーパーティや財政保守派が反ポールというのは厳密には正確ではない。共和党主流派が、ティーパーティ運動分裂のために報道を歪める圧力をかけたのではないかと、ポール陣営内外では噂されていた。

 もともとティーパーティが「反大きな政府」の仮想「連合体」である以上、こうした分裂は避けられなかった。しかし、同性婚などの問題にどこまでこだわるのか、イランの核問題をめぐるイスラエル情勢にどこまで介入するのか。キリスト教的な価値観を反映した社会争点と、安全保障をめぐる外交争点での二正面での潜在的な保守分裂は、本選に向けても解消はされていない。

オバマ政権のリベラル回帰と
共和党内の「現実的」ロムニー支持

 他方で「オバマ政権の大きな政府路線をなんとかして止めたい」という原動力が、ティーパーティ系や保守派に大きいのも事実だ。オバマ政権は10年中間選挙後に「ブッシュ減税」を延長しいったん中道化したものの、11年秋以降、雇用対策法案を打ち出し、製造業復活へのインフラ投資を強調する経済ポピュリズムで「大きな政府」路線に再び転換している。オバマ政権の「大きな政府」路線への警戒心は共和党内で益々強くなっている。ある程度理性的な判断ができる有権者は、「ロムニーが唯一オバマを倒せるかもしれない共和党候補」であることを機械的に優先し、ロムニーを選んだ。

 ロムニーを選んだ共和党有権者は、必ずしもロムニーが好きなわけではない。オバマ政権転覆への本気度が強い保守派にも、保守派だからこそロムニーを支持する者が少なくない。その中には元ティーパーティ活動家で、ロムニーを支持した人も混在している。ティーパーティ運動は予備選過程で、一枚岩の存在感を見せなかったが、水面下ではティーパーティ的なる要素は、共和党予備選に大きな影響を与えているし、今後ロムニー陣営としても、ティーパーティ系保守派の情熱を「内側(反党内エスタブリッシュメント)」ではなく「外側(反オバマ)」に向けさせ続けることが、勝利の土台になろう。

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