2024年5月20日(月)

田部康喜のTV読本

2020年2月14日

さまざまな秘密が折り重なるストーリー展開

 圭太(向井)と暮らしている娘の瞳が帰宅しない。学校や瞳の友達を訪ねると、塾も音大を目指して続けていたバイオリンの練習もやめていることがわかる。娘のことをなにも知らなかったことに、圭太は愕然とする。由貴子(仲間)とようやく連絡が取れると、瞳は失踪ではなく誘拐されたのであり、帝東建設の隠蔽事件が絡んでいることをほのめかされる。瞳を取り戻すには、自殺した社員の自宅のPCから偽装工作を証明するデータを盗んで帝東建設に渡さなければならない。

 PCのなかのデータのなかから、必要なものを選び出せるのは、建築確認検査員としての圭太の腕が必要なのだというのだった。圭太が盗み出したデータが入ったUSBメモリーと瞳の交換に現れたのは、謎の男・二本松謙一(遠藤雄弥)だった。瞳のみている前で、由貴子は二本松に腕を切りつけられて血を流した。

 圭太は、瞳が幼少時代の秘密を抱えていた。由貴子と家族3人で行ったキャンプの折に、瞳がひとりで石油ランプを持って別荘地に紛れ込み、ランプの灯がひとつの別荘の火事を引き起こしたのである。ひとりのピアニストの女性が亡くなった。圭太と由貴子は、警察に事情説明に行くことを避けて、永遠の秘密にしようと約束した。圭太はそれ以来、毎月遺族にカネを送って贖罪の気持ちを表してきた。

 ところが、瞳に近づいてきた、音大生の伊達翼(北村北斗)が瞳を心理的に誘導して、火事の事件を思い出させた。そして、伊達もまた秘密を抱えていた。別荘で亡くなった女性ピアニストの息子だったのである。伊達は「母親は火事の前に殺されていた」といって、圭太にナイフで切りかかる。犯人だと思っていたのである。

 由貴子の企みも明らかになってくる。瞳の誘拐事件を仕掛けたのは由貴子であり、圭太に盗ませたデータを帝東建設に3億円と引き換えに渡した。圭太は、そのことと由貴子がさらに、自殺した社員のメモを3億円で取引することを経営戦略室長の宇都宮(渡部)から聞いて、街金の暴力団と組んでこの3億円を奪う。

 わき役陣のなかでは、圭太と親しい近所のソバ屋の娘で、保育士の石川菜七子役の仲里依紗が、昼間のまじめさから夜になるとその表情を一変させる演技が見ものである。

 正義と悪がたちまち入れ替わって、さらには悪と悪とが策謀をめぐらして相手を出し抜こうとする。さまざまな秘密が折り重なって、ラストに向かって真実が明らかになっていこうとしている。サスペンスは、観るものが悪に魅入られる、ピカレスク・ロマンの衣装をまとっている。

  
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