除染 「年間1mSv」の呪縛
ゼロリスクの罠

WEDGE6月号 第二特集


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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この記事は、WEDGE6月号第2特集 『除染・津波 ゼロリスクの罠』 第1章を無料で公開したものです。

 東京電力福島第一原子力発電所から南へ20~30キロの位置に広がる福島県広野町。事故直後、町長の判断で全町避難を実施し、役場を含む多くの住民がいわき市内の仮設住宅などで生活を送ってきた。役場は3月から機能を回復したが、町民5300人のうち完全に戻ったのは300人ほど。町は全町民の帰還を目標に掲げるが、その前提となるのが除染。まず8月までに住居など生活圏の除染を進め、2学期に学校を再開。その後農地なども含めた全町規模の除染を年内に終わらせる計画だ。目標としては、今回はまず空間線量率半減、最終的には追加被ばく線量年間1mSv(ミリシーベルト)以下を目指す、としている。

“徹底除染”を求める住民

 町は3月から毎週土曜日に地区ごとに除染作業の住民説明会を実施してきた。4月28日、最後の回となる説明会が役場そばの公民館で開かれた。

 「半減が目標というが、それは平均か。高い場所があったらどうするのか。再度除染をしてくれるのか」

 「付近の町道や農地に線量が高いところがある。今回の計画に入ってないようだがいつやるのか」

 「庭の線量が高いので半分になっても年間1mSvにならない」

村民帰還に向け線量計の配布が始まった広野町 (撮影:編集部)

 住民はみな落ち着いてはいたが、年間1mSvを早期にかつ完全に達成することを求める声が相次いだ。広野町除染対策グループリーダー、松本正人氏は「年間1mSv以下でないとダメとみんな思っている」と語る。町のモニタリング結果によれば、山林近くに年間10mSvを超すホットスポットが一部残るが、生活圏の空間線量はほぼ年間5mSv以下、多くは3mSv以下だ。生活圏は除染で半減できれば多くは年間1mSvを切る、というのが広野町の状況である。

 説明会終了後、ある60歳代の女性はこう話してくれた。「年間5mSv以下なんて、とくに問題ないから、除染しなくても帰れるのよ。広野は全体的に線量が低い。ここに65億円も使うのはもったいない。復興のためにもっとほかにお金が必要なことあるでしょ」

 町は2012年度末までの1年強の除染作業を、総合評価方式で選んだ清水建設に65億円で一括発注している。「人手がかかるため大手ゼネコンでないと引き受けられない」(松本氏)。清水建設は毎日約700人の作業員を投入しており、「赤字になるかもしれないくらいで、儲けは出ない。福島の復興に貢献したいという一心で仕事をしている」(清水建設の現地担当者)という。作業員も地元を優先し、福島県内で約85%を確保しているという。

 65億円は安心のためには決して無駄金ではないのだろうが、広野町の汚染レベルで、屋根や壁などの高圧洗浄や、庭の表土の剥ぎ取りを行うことには疑問の声もあがっている。

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