中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年5月25日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 欧州債務危機が新たな局面に入りつつある。6月17日の再選挙の結果次第では、ギリシャがEUに公約している財政健全化策が放棄され、見返りとしてのEUの金融救済策がストップするのみならず、ギリシャがユーロ圏を離脱する可能性すら現実味を帯びてきたからだ。

ふたたびユーロ離脱が懸念されるギリシャ

(図表1)アメリカ 大恐慌前後の失業率
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 切羽詰まった状況にギリシャが陥っている背景には、厳しい経済情勢がある。ギリシャやスペインでは失業率が25%近くに達しているが、これは大恐慌後1933年のアメリカの失業率(図表1)に匹敵するもので、もはや景気が悪いというより恐慌的と見ることができる。

 あまりに厳しい経済状況では、いくらユーロ圏にとどまることを希望するギリシャ国民が大多数であっても、あるいはいままでの放漫財政のツケがでて身から出た錆といっても、さらなる財政緊縮はできないに等しい。もはや、背に腹は代えられないということだ。

 もっとも、ユーロ圏の離脱は一層の経済困難につながる。ユーロ圏を離脱すれば、ギリシャは、遵守できないような財政規律を堅持する必要はなくなるが、完全に自助努力で経済財政再建を図らなければならなくなる。

 また、ユーロ圏を離脱すれば、ユーロ通貨を自国通貨に切り替えることになるが、債務は基本的にはユーロ建てで残り、債務負担に耐えられない企業や家計が続出してしまう。

欧州で「財政緊縮も成長も」への
政策変更が進み始めた

 ギリシャの置かれた厳しい状況では、ギリシャもユーロ圏諸国も新たな政策を模索するしかない。ちょうど、フランス新大統領となったフランソワ・オランド氏も「財政規律も成長も」と主張しており、成長政策を模索する動きはEU域内で一気に広がっている。

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