脇が甘かった鹿野農相、筒井副大臣

中国人スパイが付け入った複雑な対中農産物輸出事情


Wedge編集部

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

»最新記事一覧へ

外国人登録法違反の疑いで警視庁公安部から出頭要請を受けながら本国に帰国した中国大使館の一等書記官。農水省の機密文書を入手していたとされるなどスパイ活動への関与も疑われている。

促進事業のきっかけ
「勉強会」の実態

 この書記官が深く関わっていたのが日本産食品の中国への輸出を促進する事業だ。この事業は、民主党衆議院議員の元公設秘書を代表理事とする社団法人・中国農産物等輸出促進協議会(以下、促進協議会)が中心となり、日本の企業や団体から会費を募って北京に日本産食品の常設展示館を開設することを目指している。

 そもそもこの事業が始まるきっかけは、2010年に始まった民主党の農水族議員らが中心となって立ち上げた非公式な勉強会「農林水産輸出産業化研究会」だ。民主党議員のみならず、中国大使館関係者や中国系シンクタンク、さらには農水省官僚らが参加していた。そのなかに帰国した一等書記官もいたという。参加者のひとりによると、勉強会のねらいは、かねてから農水省が力を入れてきた農産物の海外輸出をさらに促進するために、まずは対中輸出に必要なノウハウを学ぼうというものだったという。

 その参加者はこう語る。「農水省関係者から『中国市場は有望だけれども、輸出相手の見極めがむずかしく独特の商慣習への対応も必要だ』との意見があったので、中国側から中国農業部(農水省)傘下の国有企業・中国農業発展集団を相手にしてはどうか、と提案があったのです。

 中国農業発展集団も日本の農産物の輸入に意欲を示していましたが、当初は農水省の紹介で日本の生産者団体と直接取引して安価で確実な輸入を希望していたようです。しかし、どういう訳か日本側では農水省の外側に社団法人を作って、そこに会費を払って入会した企業や団体のみ中国側と取引ができるようにするというスキームができあがったのです」

年会費25万円で検疫なしで出品?

 こうして立ち上がった促進協議会は、国内の企業や団体から会費を募るにあたって、「年会費25万円を納めれば、北京に開設する常設展示館に特別管轄による手続き、つまり検疫なしで出品できる」と説明していた。これに応じて会員となる企業も実際に現れてきた。昨年12月25日には訪中した野田佳彦首相がこの展示館を視察。中国側からは日本政府がこの事業を全面的にバックアップしているかのように見えたことだろう。

 ところが、実際には検疫なしで食品を持ち込むことについて中国で検疫を管轄する質検総局から了解を得ていなかったようだ。実際、促進協議会がサンプルとして3月に中国に送った米880キロ、粉ミルク88キロ、日本酒40リットルは、質検総局によって5月に廃棄処分にされてしまっている。

1
nextpage
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
「WEDGE REPORT」

WEDGE Infinity S
ウェッジからのご案内

Wedge、ひととき、書籍のご案内はこちらからどうぞ。

  • WEDGE
  • ひととき
  • ウェッジの書籍