WEDGE REPORT

2012年6月4日

»著者プロフィール

煩雑な中国の検疫手続き

 この事業の実現性を農水省の官僚は早くから危ぶんでいたようだ。関係者によると、昨年12月に北京にある日本大使館を通して質検総局に対して「検疫なしで食品を展示場に持ち込むことに同意したのか」と農水省が問い合わせたところ、質検総局は「日本の農林水産品、食品を北京で常設展示することについてわが局は全く事情を承知していません」との回答を得ていたからだ。さらに、今年3月にも筒井農水副大臣が記者会見で、中国側と協議を行い、検疫なしで輸出ができるようになったとの旨の発言をしたところ、質検総局が日本大使館に「このような発言が本当にあったのか」と問い合わせてきたという。つまり、質検総局にしてみれば、「そんなの聞いていない」ということだ。こんな根回しでは到底、検疫なしを実現することはおぼつかない。

 実現性が危ういのに国内の企業や団体から資金集めをしていたのではないか、促進協議会の代表理事に記者がそう指摘すると、「それは中国側の受入窓口の中国農業発展集団と質検総局が協議すべき問題で、われわれには責任がない」と答えた。

中国産の10倍以上の日本産米

 それにしても、検疫なしで北京の展示館に出品できることがなぜ重要なのだろうか。実際、会費を支払った企業も存在する。じつは背景には、中国特有の煩雑な検疫手続きがある。

 たとえば、米を見てみると、中国は2003年以来、日本米にはカツオブシムシという害虫がいる恐れがあるとして、輸入にあたって指定工場での精米と害虫駆除のための燻蒸処理を義務づけている。このうち中国の検疫当局の承認を受けた指定工場は神奈川県綾瀬市にある全農の関連会社の工場しかなく、燻蒸処理についても横浜市内の施設しかない。農水省では国内8カ所で新たな燻蒸施設の整備を急ぐが、いまところ年間の最大処理能力は、精米工場が年間約5万5000トン、倉庫が同約3000トンしかない。

 中国国内では富裕層の台頭にともなって品質の高い日本米への関心が高まっているが、現状では輸出したくとも中国側の検疫が高い壁となってできないでいる状態が続いているわけだ。

 また、このような処理を行うこともあって、中国で売られている日本産米は1キロ当たり約1500円と現地産米の10倍以上。いくら富裕層が好むとはいえ、これではあまりにも価格差が開きすぎている。

 米以外の食品についても、「中国の検疫当局は食品の輸入には神経質な面があり、しばしば恣意的で理解不能な判断をすることがある」(食品を扱う商社の関係者)

 このため、検疫が免除される特別措置の実施という促進協議会のうたい文句は、食品を扱う多くの企業にとって魅力的なものだったのだ。

まったく進まない会員拡大

 ところが、わざわざ会費を払った上で促進協議会を通して中国内の特定の取引先へ輸出する、というやり方は農業関係団体に不評だった。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る