2024年5月14日(火)

WEDGE REPORT

2020年5月29日

戸惑いは共和党にも

 マスクを拒否する大統領の姿勢には共和党からも戸惑いの声が高まっている。ワシントン・ポストによると、特にコロナウイルス感染拡大の第2波を恐れる共和党の知事たちや11月の選挙で激戦になっている連邦議員らの間では深刻だ。中西部オハイオ州のデワイン知事はツイッターで「マスクは他人にウイルスを感染させないためであり、政治の問題ではない」と苦言を呈した。

 共和党の上院議員はウイルスに感染して回復した1人を除き、全員がマスクを着用。「公式に発言する時はマスクを外す」とするペロシ下院議長(民主党)が定めたルールに従っている。共和党の中には、「消毒薬を体内注射したらどうか」というとっぴな発言や、感染予防のため抗マラリヤ薬「ヒドロキシクロロキン」を服用していたことなど、大統領の言動を苦々しく思っている人も多い。

 しかし、大統領のマスク拒否の姿勢は党派の分断にも敏感に反映されているのは事実だ。同紙が今月実施された世論調査として報じるところによると、民主党支持者の89%、無党派の72%が「外出の際にはいつも、ないしはほとんどマスクを着用している」と回答。対して共和党支持者で、マスク着用を実行しているのは58%と少ない。

 最近の3つの世論調査では、トランプ大統領がマスクをすべきだとしている人が64%~72%いた。共和党の中でも38%~48%が大統領のマスク着用を支持している。マスクの着用拒否は大統領の岩盤支持層には評判が良くても、一般的には支持されていないというのが実情ではないか。

 大統領は5月、西部アリゾナ、東部ペンシルベニア、中西部ミシガン、南部フロリダの激戦州を訪問し、支持率でバイデン氏に劣勢な情勢を好転させようと躍起になっている。国内の死者が10万人を超えたコロナ禍ついても最近のツイッターで「自分がいなければ、200万人もの国民が犠牲になっていただろう」と自画自賛、批判されている初動対応の遅れを一蹴した。

 大統領は28日、会員制交流サイト(SNS)の運営会社による投降規制を難しくさせる大統領令に署名した。「郵便投票は不正につながる」という大統領のツイートに、ツイッター社が事実確認の注意を喚起したことに猛反発、巨大IT企業による保守派の言論の検閲をさせないようにするとして「ツイッター社との戦争」(ニューヨーク・タイムズ)に発展させた。

 マスク着用問題と同様、選挙戦を有利に運ぶための支持基盤固めが狙い、などと取り沙汰されているが、“ツイッター政治”を定着させた大統領自身が「最も打撃を受けるのではないか」(同)とも指摘されている。

  
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