WEDGE REPORT

2020年5月29日

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バイデン氏(REUTERS/AFLO)

 トランプ米大統領が5月25日の戦没将兵記念日(メモリアルデー)の際、黒いマスク姿で慰霊碑を訪問した民主党のバイデン前副大統領を嘲ったのに対し、バイデン氏が「人命が犠牲になっているのに、本当にアホだ」と噛みついた。大統領は批判したことを否定しつつ「極めて異常に見えた」と強弁したが、マスク対決はバイデン氏に軍配が上がった格好だ。

マスクは“弱さ”の象徴か?

 事の発端はトランプ大統領がバイデン氏を嘲笑するような保守系政治評論家のツイートを転載したことだ。このツイートはバイデン氏が地元の東部デラウエア州の戦没者慰霊碑を訪れた際の写真とともに「これが、トランプが公衆の前でマスクをしない理由の説明だ」と書き込まれていた。大統領の長男ジュニア氏もインスタグラム上で、バイデン氏のマスク姿を「臭いもかぐことができない“口輪”」とからかった。

 大統領は公の場でマスク着用を求める「米疾病対策センター」の勧告に同意し、ホワイトハウスのスタッフにもマスクをするよう義務付けている。しかし、自らは「着用しない」と宣言し、ペンス副大統領ら側近たちもマスクは着用しない。側近たちにとって「マスクをしないことが忠誠の踏み絵になっている」(専門家)。この日は、大統領もワシントンのアーリントン国立墓地の慰霊碑に献花をしたが、無論、マスクは着けていなかった。

 日頃から“寝ぼけたジョー”とバイデン氏を嘲ってきたトランプ氏が、評論家のツイートに「わが意をえたり」と飛びついたのは想像に難くない。トランプ氏がマスクをしない理由は実は本当のところは明らかではない。米紙などは、マスクは大統領にとって「人間的な弱さ」「政治的正しさ」の象徴ではないか、と指摘しているが、単に美学の問題なのかもしれない。

 「人間的弱さ」は大統領が好む“強い男”とは正反対のイメージであり、「政治的正しさ」は彼が忌み嫌うオバマ前大統領やヒラリー・クリントン氏に重なる価値観だ。つまりは民主主義や人権、少数派や移民への配慮、国際社会との協調といった理念だが、大統領は「政治的正しさ」を拒否している。専門家の1人によると、マスクはコロナウイルスの脅威が続いていることを示すものであり、再選のために速やかな経済再開を目指す大統領としては、マスク姿を絶対に国民の前にさらしたくないのだという。

 大統領は26日のホワイトハウスの記者会見でバイデン氏を嘲ったことについて、「彼は(献花のために)外にいて、そこは完璧な環境、素晴らしい天気だった。だから、マスクを着けているは極めて異常だと思った。批判はしていない」などと釈明した。

 しかし、この後、マスクを着けて質問しようとした記者には、マスクを外して質問するよう命じ、記者がマスクをしたまま声を大きくして質問すると、大統領は「まあ、いい。君は“政治的に正しくありたいんだな”」と切って捨てた。

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