2024年4月20日(土)

World Energy Watch

2012年6月18日

自国より日本向け供給を優先するのか

 多くのアジア諸国では電力不足が深刻だ。経済成長に電力供給能力が追いつかない。世界一の電力消費国中国では今年の夏の電力設備の不足量は年初には3500万kWから4000万kWと言われていた。日本の発電設備量2億8000万kWの15%に相当する原発35基から40基分の量だ。

(表-1)一人当たりの年間電力消費量(kWh)
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 その後経済成長が予想より低いことから不足設備量予測は1800万kWに下方修正されたが、電力不足は当分の間解消の見込みはない。アジア諸国の1人あたりの電力消費量を見れば、電力需要量が今後大きく伸びると予想できる。欧州とアジアのいくつかの国の1人当たり電力消費量を表-1に示している。

 日本以外のアジア諸国では、実際に今後大きな電力需要の伸びが予想されている。無電化地域を抱える国も多い。そんななか、発電設備を作って、その電気を日本に輸出する国が出てくるのだろうか。まず、自国の需要を満たすのが先決だろう。電力不足に悩む国が電力輸出を行うことはありえない。もし行えば無電化地区を中心に自国民の怒りを買うだろう。自国の需要量を賄う発電、送電設備を建設し、その燃料の手当てを行うだけで手一杯の国ばかりだ。日本の面倒までみてくれる国があるだろうか。

原発の電気で脱原発?

 数兆円規模の投資になると予想される海底ケーブルを敷設するからには、毎年相当量の送電が行われなければ、競争力のある電力料金には仕上がらない。それだけの量の設備を、自国の需要より優先し日本のために建設してくれる国がどれほどあるのだろうか。送電線を作っても電気が来ない事態になりはしないのか。

 殆どの国が先進国となり、電力需要の伸びも同じような推移を辿っている欧州諸国と、発展段階も異なり経済規模も大きく異なるアジア諸国では、電力供給を取り巻く環境も全く違う。アジアの中で大きな需要を持つ日本が、需要の大きな伸びが予想される供給力の小さい他国に供給を頼り、脱原発を目指すのは難しい。そもそもベトナムなど原発計画のある国から、日本の脱原発のために原発で作られた電力を輸入することが可能だろうか。原発の電気で脱原発では笑い話だ。

ロシアから電力を輸入できるのか

 それでは、比較的簡単に発電設備を建設可能なロシア東部からの送電は朝日新聞が予想するように可能だろうか。ロシア東部には豊富な天然ガス資源を利用したガス火力、また水力発電所も建設可能だ。ここで問題になるのは、エネルギーの安全保障だ。


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