山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2012年7月4日

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 初夏のモスクワに行った。トーポリ(泥柳)の花粉が舞う時期で新緑が光り輝き、私が最も好きなロシアの季節である。モスクワの初夏はトーポリのプフ(綿毛)が風に舞い、街の吹き溜まりに雪のように積もる。今回は2泊3日の短期出張だったが、旧い友人であるイゴール・リケルソン(Igor Raykhelson・51歳)に会った。

メタルトレーダーを副業にするジャズピアニスト、イゴール・リケルソンさん (写真:筆者提供)

 彼の広い事務所には、グランドピアノが置いてある。というのも、彼は一流のメタルトレーダーであると同時に、一流のクラシック&ジャズピアニストでもあるからだ。彼はソ連崩壊の年、ニューヨークのジュリアード音楽院を卒業した。帰国したものの母国は経済が破綻した状態で、音楽どころではなくなっていた。そこで、ロシアのスポンジチタンなどレアメタルの輸出をはじめたという変わり種である。

 以来、チタン市場が不振な時期になると、音楽活動に力を入れる変なトレーダーなのである。レアメタル業界には単にビジネスだけでなく、自分の趣味と実益を兼ねているトレーダーが少なくない。同じく彼のビジネスパートナーであるアメーリン氏もギタリストであるし、私の旧友であるタングステン工場のシャペタ氏は、趣味が高じて今や極東ロシアを代表する詩人協会の代表をしている。

 こうした例は日本では希で、日本人は自分の職業にすべてを賭ける傾向がある。社会的に信頼される人物とはそういう人なので結構なことなのだが、職業から離れた時には脆い部分がある。中高年になって肩たたきされると、うつ病になる人も少なくない。そう考えると、思い立った時に好きなことをするのも悪くない。

視野狭窄から抜け出す道

 若い人の中には、本業で培ったスキルを社会貢献として役立てる「プロボノ」と呼ばれる取り組みに当たる人が増えているという。行政が硬直化する一方、地域社会のニーズの多様化でNPOがボランティアの形で地域貢献するケースが増えている。

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