ロシアがシリアを擁護する3つの理由


廣瀬陽子 (ひろせ・ようこ)  慶應義塾大学総合政策学部教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

解体 ロシア外交

紛争、エネルギー、政治、経済など様々な外交カードを所持し、それを絶妙なタイミングで切るロシア。日本の隣人でありながらその内側がなかなか見えない大国に、不気味な印象さえ抱く。ロシアの外交、そしてその動きの背景を、ロシアと周辺国事情に詳しい著者が読み解く。

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本連載においても、最近のロシアと欧米、特に米国との関係は、「リセット」政策などがあっても、基本的に緊張状況にあると指摘してきた。特に、プーチン大統領が返り咲いた後のロシアと米国の関係はかなり厳しいものになるということは多方面で予測されている。

複雑なロシア・シリア関係

 ロシアとシリアはソ連時代から密接な関係を維持し、現在もシリアはロシアにとって重要な中東の友好国であり、その戦略的意義は極めて高い。ロシアはCIS諸国外で唯一の自国の軍事基地をシリアのタルトス港に維持している。また、戦車、航空機、対空防衛システム、そして最新鋭の弾道ミサイル等の兵器・武器をシリアに供与してきた。

 しかし、ロシアにとって、シリアとの関係は決して理想的なものではないという説もある。何故なら、ロシアはシリアに武器を売却する際に、武器購入資金としてクレジットを提供しなければならなかったし、ソビエト期の約134億米ドルにおよぶシリアの債務のうち73%に相当する98億米ドルを帳消しにすることも合意しなければならなかったからだ。

 また、ロシアのメドヴェージェフ大統領(当時)が2010年にシリアに訪問した際には、シリアに原子力発電所を建設することを提案しているが、結局、何も進展は見られていない。そのため、両国の関係の基盤となっているのは、軍関係者、政治高官、武器・兵器の取引業者などのもっとミクロなレベルの関係だという論者もいる。

シリアをめぐる米ロの温度差

 とはいえ、2回にわたり国連安全保障理事会の対シリア非難決議に拒否権を行使してきたロシアと、欧米諸国の温度差は極めて大きい。特に米国とロシアの関係は、日に日に厳しさを増している。

 それでは、何故ロシアはアサド政権を擁護するのだろうか。理由は単純ではないが、大きく分けて、3つあると思われる。

 第一に、ロシアのプーチン大統領とシリアのアサド大統領は、権威主義的ないし独裁的指導者としての利害を共有している。プーチン氏は「アラブの春」の影響がロシアに及ぶことを恐れ、昨年末から続くロシアの反政府運動にもかなり神経質になっている。

 第二に、懐疑的な意見もあるとはいえ、前述の通り、軍事契約、ロシアはタルトス港の海軍基地、原子力部門での協力構想など、シリアにおける経済的・軍事的利権を持っているといえる。

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「解体 ロシア外交」

著者

廣瀬陽子(ひろせ・ようこ)

慶應義塾大学総合政策学部教授

1972年東京生まれ。専門は国際政治、コーカサスを中心とした旧ソ連地域研究、紛争・平和研究。主な著作に『旧ソ連地域と紛争――石油・民族・テロをめぐる地政学』(慶應義塾大学出版会)、『強権と不安の超大国・ロシア――旧ソ連諸国から見た「光と影」』(光文社新書)、『コーカサス――国際関係の十字路』(集英社新書)【2009年アジア太平洋賞特別賞受賞】など。

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