あれから3年も経ったのか、と思うと無力感がことさら深い。3年前の7月5日、新疆ウイグル自治区のウルムチ市で、いわゆる「7.5ウルムチ事件」が起き、数百人の犠牲者と夥しい数の行方不明者が出たと伝えられた。この事件を、読者の皆さんはどれほどご記憶だろうか?
3年前、事件からちょうど10日後に筆者は、ワシントンD.C.で世界ウイグル会議(WUC)のラビア・カーディル(Rebiya Kadeer)総裁にインタビューし、その内容を寄稿したが、一体あのときと今とでウイグル情勢の何が変わったといえるのか?
この3年、ラビア総裁のWUCメンバーをはじめとした在外ウイグル人らは、「事件を忘れないで」「国際機関による調査を」と訴え続けてきた。しかし、今年の5月、日本で「世界ウイグル会議 代表者大会」が催された際のインタビューで、ラビア総裁は、祖国における中国当局の弾圧はますます厳しく、暴力的なものとなっていると、その窮状を訴えた。
同じく前回の本コラムで触れたが、この5月から6月にかけて、12歳の少年が当局によって拘束された後、拷問を受けて死に至ったと見られる事件や、当局のイスラム学校への強制突入により、多くの児童が負傷する事件等が起こったとの情報も伝えられている。にもかかわらず、焼身抗議が続くチベットと同様、ウイグルの現状に関して、国際社会の一員たる私たちはまったく無力である。
ウルムチ事件以降、数千人の強制失踪?
ウルムチ事件から3周年の日が間近に迫った6月末、WUCからあるレポートが出された。標題には、「2009年7月5日の事件後、東トルキスタン(中華人民共和国 新疆ウイグル自治区)において発生した強制失踪事件について」とある。
まず、「強制失踪」という文言だが、これは2006年の国連総会で採択された「強制失踪防止条約」のなかで、「国の機関又は国の許可、支援若しくは黙認を得て行動する個人若しくは集団が、逮捕、拘禁、拉致その他のあらゆる形態の自由のはく奪を行う行為」と定義されている。日本も批准している同条約では当然のこと、強制失踪は人道上の罪として禁止されている。