2024年5月20日(月)

Wedge REPORT

2020年8月24日

〝ドタキャン〟も想定内に

 だからこそ同団体の検査機関や医療体制は自前の医療チームや充実した医療施設まで整備されており、日本の格闘技団体はもちろんのこと、他のプロスポーツと比較しても完全に凌駕している。大変申し訳ないが「UFCが前日に陽性反応者を出しても試合開催できたのだから、パンクラスだって強行開催できたはず」という指摘は両団体の背景をまったく把握できていない楽観論であり、ツッコミどころ満載の詭弁というほかにない。 

 こうした諸々の批判や異論を覚悟の上で、開始10分前の大会中止に踏み切った主催者側、特に酒井代表の判断にはかなり勇気が必要だったと推測する。観戦を楽しみにしていたファンや試合放送を楽しみにしていた人たちにとってはとても残念な出来事であり、大会出場に向けてハードなトレーニングを重ねてきた選手たちにとってもやり場のないフラストレーションが蓄積されることになってしまったのは言うまでもない。かくいう筆者も取材を兼ねてチケットを購入した知人と当日来場しようとしていた1人だ。

 それでも、もし当日検査で陽性反応者が出たにもかかわらず楽観論に則り〝スルー〟して強行開催に踏み切っていたとしたら、おそらくシャレにならない事態に発展していたことだろう。それこそ今とは比較にならないレベルで猛バッシングを浴び、団体の存亡の危機にも発展しかねないような最悪の結果を招く危険性も十分にあった。おそらく日本の格闘技界全体にも大きな打撃を与えてしまうはずだ。そういう意味でもパンクラスの下した「開場10分前の大会中止」は英断だったと個人的には考えている。

 これからの「ウィズコロナ時代」「新しい生活様式」の中において、スポーツ界でもこうした〝ドタキャン〟が頻発し想定内となることを我々は念頭に置いていかなければいけなくなりそうだ。

  
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