WEDGE REPORT

2012年7月23日

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園山 実 (そのやまみのる)

三菱総合研究所主席研究員

1967年生まれ。埼玉県出身。東京大学工学部精密機械工学科卒業後、91年三菱総合研究所入社。現在、環境・エネルギー研究本部エネルギービジョン研究チームリーダー。専門はエネルギー、システム工学。

エネルギーの調達先を海外に頼るという日本の本質的な構造が変わらない中、
日本は将来に及ぶエネルギーミックスの大きな選択に迫られている。
震災を経て、原発をはじめとする電力施設の安全性が最優先と認識された一方で、
エネルギーの安定供給は生活や生命の維持に不可欠であることも再認識された。
安全や安定供給の保持へ、コストの観点も含めエネルギーの多様性を踏まえた議論が必要だ。

エネルギー需給を国民的に議論

 これまでに経験したことがない深い霧の中、今を生きる日本人は将来に及ぶエネルギーミックスの大きな選択を迫られている。

 2030年のエネルギー需給の姿について、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会では25回を超す議論が重ねられた。並行して、原子力委員会では核燃料サイクル政策、中央環境審議会では温暖化対策のあり方が議論され、エネルギー・環境会議はこれらを統合する複数の絵姿(選択肢)を国民的議論に供している。

 その最大の論点は将来の原子力への依存度の想定にある。東日本大震災前に26%程度あった原子力発電比率を、(1)できるだけ早期にゼロとする、(2)30年に15%程度とする(40年経過した発電所を順次廃炉にするペース)、(3)一定程度維持し30年に20~25%程度とする3つの選択肢がテーブルに並べられた。

 我々に求められるのは、震災前に十分に見えていなかったリスクに徹底的に向き合うことに加え、長きにわたり対峙してきた持たざる国特有のリスクを棚上げしないことである。その選択にあたって、ふと冷静になると、資源のない日本が本当にこれほどまでに積極的なエネルギー選択をし得るものなのか、という根本的な思考にいきつく。

 日本のエネルギー需給システムは数々の技術革新により先鋭化したが、潜在するエネルギー調達不安や価格高騰のリスクはむしろ高まっている。

 実際、化石燃料の自主開発比率は思うように上がっていない(現状約26%程度)。近年石炭や天然ガスの輸入国に転じたばかりの中国とインドの石炭需要は向こう5年で日本の数倍になることが予想される。震災後の日本の天然ガス需要の急増を支える救世主的存在でもあるカタールは、ロシア依存からの脱却に熱心な欧州への輸出を拡大している。石油についても、自主開発原油の約4割が集中するUAE(アラブ首長国連邦)での権益のうち、半分の期限があと5年余りに迫っており、世界の石油メジャーをはじめとする石油開発会社が虎視眈々と新規参入の機会を窺っている。

 震災後に日本が調達するLNG価格は約1.5倍に跳ね上がった。シェールガスの出現による需給の緩和が期待されるところであるが、日本への輸送コストの問題やアジア各国が求める市場の重なりから、今後も価格は高止まりすると考えるのが無難だ。貿易収支を31年ぶりに赤字に転落させた燃料調達コスト増は当分の間収まりそうにない。アジアを中心とする新興国の旺盛なエネルギー需要増と世界各国のしたたかなエネルギー戦略によりエネルギーの争奪戦は急速に激化し、経済負担が拡大していくだろう。

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