解体 ロシア外交

2012年8月3日

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 今年5月にプーチン政権が再誕生し、大統領就任直前にプーチン氏が、北方領土問題の解決に前向きとも取れる発言をしたことから、プーチン政権下で北方領土問題が何らかの進展を見せるのではないかという期待が日本で高まったことは記憶に新しいだろう。

 しかし、筆者はプーチン政権で状況が変わるという期待にはかなり悲観的だった。実際、最近のロシアの北方領土政策の強硬化は極めて深刻な状況を呈している。

 北方領土問題の膠着状態が続く中、実は最近、ロシアは隣国ウクライナとの領土問題を解決していた。今回は、その経緯を辿りながら、北方領土問題の参考となるヒントがあるかどうか、探ってみたい。

深刻な北方領土問題の緊張

 まず、7月3日にはメドヴェージェフ首相が再び北方領土・国後島を訪問した。当初、首相は択捉島訪問を計画していたが、悪天候のため、国後島に行き先を変えたのだという。要するに、北方領土に足を踏み入れさえすれば良いという姿勢がうかがわれる。この首脳の北方領土訪問に対し、日本は2010年に続きもちろん抗議した。だが、ロシア側は日本の抗議は形式的なものと切り捨てたうえに、「内政干渉」だとしてむしろ日本に抗議する姿勢を強め、ロシアメディアも日本側の抗議を批判した。

ロシア資本で進む開発

 2007~15年のロシア政府による予算・総額280億ルーブル(約680億円)の「クリール諸島社会経済発展計画」の一環で、多くのインフラが整備されている。幼稚園の開設や今年6月はディーゼル発電所も開設した。

 7月6日には、1億6000万ドル(約128億円)を投じて国後島に一つ、択捉島に七つの計八つの魚の養殖工場を建設する計画が明らかにされた。国後島を訪問したメドヴェージェフ首相が、サハリン州で開いた会議で計画実施が決定されたという。工場建設のための道路整備なども同時に進められ、雇用創出も期待されている。

 同11日には、メドヴェージェフ首相は、自身が党首を務める与党・統一ロシアの幹部会合で、国後島と色丹島に「スポーツ・健康複合施設」の建設計画を取り仕切るよう命じた。国後、択捉両島のみならず、1956年の日ソ共同宣言で、平和条約締結後に変換するとされていた歯舞・色丹の2島までインフラ整備の波が拡大しているのは、日本にとって極めて由々しい展開だ。

 また、7月17日には、択捉島で建設中の新空港の供用が2013年に開始されるという見通しが発表された。国際空港として建設が進められており、滑走路などは今年末の完成が見込まれている。択捉島の現空港は老朽化しているだけでなく、頻繁に濃霧により運航に支障が出ており、実際にメドヴェージェフ首相も今月の訪問がその理由で不可能となった経緯がある。新空港は天候が比較的穏やかなオホーツク側に建設されており、天候の影響をより受けないようにする効果も期待されている。

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