解体 ロシア外交

2012年3月7日

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 2012年3月4日、ロシアで大統領選挙が行われた。2011年12月の下院選挙での不正は、国民間でくすぶっていた反プーチン機運に火をつけることになり、それ以後、中間層を中心に抗議デモやインターネットによる反プーチン運動が激化することになった(参考:拙稿「ロシア下院選挙 ―― プーチンに国民がつきつけた「ノー」」「プーチンの飼い犬も反旗を翻し始める 「ロシアの冬」は到来するか?」)。

「ばらまき」で支持率アップのプーチン

 プーチンに匹敵する国民を魅了できる候補者が不在の中、プーチンは給与・年金引き上げや軍事費増強など「ばらまき型」の政策や、愛国心を鼓舞する訴えなどを主要紙への論文寄稿などによって連発した。その結果、下院選挙後には40%台前半まで落ちたプーチン支持率は、2月末には66%(レヴァダセンター)にまで上昇した。

 選挙では、プーチン氏が第一回投票で過半数を確保し、再選を決める可能性が高いと考えられていたが、次期政権の安定性と正統性を確保するためにも、いかに高い得票率を確保するかが焦点となっていた。

 選挙は即日開票され、4日夜(日本時間5日未明)に、プーチン氏はモスクワのマネージ広場で、メドヴェージェフ大統領と共に舞台に上がって勝利宣言をした。 

 プーチンの得票率は確かに全体としては高かったが、以前のような国民の熱狂はそこになかった。モスクワでは得票が過半数を超えなかったし、他に選択肢がないからプーチンに投票したという住民が多いのである。さらに、野党陣営は、不在者投票用の投票用紙を利用して同一人物が何度も投票を行う「回転木馬投票」があったと主張している。そして、反プーチン派は選挙翌日の5日夜に、モスクワのプーシキン広場で、「プーチンがいないロシア」を求める抗議行動を起こした。

 加えて、北コーカサスでは、大統領選挙の投票後、武装派によって投票所が襲撃される事件も起きている。これにより、警察官3人、武装派1人が死亡した。ロシアにとって長年の懸念材料であった、北コーカサス問題が、プーチン新政権期においても難問であり続けることを象徴するかのような事件だといえる。

国内の中間層の不満解消が必須

 プーチンはこれまでの政権運営においては、内外で強い指導者を演出し、強いロシアの建設を掲げてきたが、今後はそうもいかないと思われる。

 まず、国内に対しては、反プーチン機運をいかに収束させていくかが問題となる。反プーチン運動を繰り広げているのは、都市の中間層であったが、彼らの不満をどう解消していくかが課題となるだろう。選挙戦期間中の「ばらまき」政策により、プーチンは支持率を66%まで上昇させることができたが、途中で支持に回った人々は主に公務員、軍人、教員、地方の人々だったと想定され、やはり中間層の心はつかんでいない。

 中間層も、自分たちが裕福になれたのは最初のプーチン時代だという意識はあり、プーチンを決定的に排除しない可能性も高い。しかし、汚職廃絶や透明性の確保、民主化などを進めていかないと、今後、大きな反対のうねりに発展する可能性も否めない。

 また、プーチンが選挙戦期間中に掲げた「ばらまき」政策が、永遠に続けられるはずもない。どこかで、見切りをつけなければ、国庫が破綻するわけだが、その収拾は極めて困難であろう。やり方を間違えれば、現在のプーチンの支持層の大きな反発を招くことは必至だ。

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