解体 ロシア外交

2012年3月7日

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 さらに、今後、北コーカサス問題や移民問題含む民族問題をどう解決していくかということも重要な課題となる。先述のように、選挙日にも北コーカサスでは武装派が投票所を襲撃する事件があり、プーチンに対する宣戦布告にも見えた。近年、北コーカサスはロシアにとって最も懸念される問題であり、メドヴェージェフ大統領も手をこまねいてきたと思われる。チェチェンのカディロフ大統領はじめ、北コーカサスの指導者はプーチンの傀儡ともいうべき性格を持っているが、北コーカサスの住民や武装派は怒りを募らせている。   

 また、北コーカサス以外の地域の住民は、政府が北コーカサスに対して多額の資金をばらまいている(しかも、それが地域指導者に濫用されている)ことに大きな憤りを覚えている。これは、選挙戦においても大きな課題となってきており、人気ブロガーで反プーチン運動の先頭を走ってきたアレクセイ・ナバリヌイ氏(35歳)もこの点を大きな問題としてきた。

ロシア経済安定のカギを握る外交

 このように、国内的にも大きな爆弾を抱えているが、その帰趨に大きな影響をもたらすのが経済問題だろう。

 現在、ロシアの経済は資源の輸出に大いに依存している。プーチンが2000年台に強いロシアを生むことができたのは、当時、石油価格が高騰したことに他ならず、今もイラン問題で石油価格が高値なのはプーチンにとって幸運なことである。しかし、これが長く続くとは限らない。実際2008年の世界規模の経済危機の際には、それまでのプーチンの経済運営が大きく批判されることになった。やはり今、経済の多角化は必至である。そこで、重要になるのが対外関係だ。良好な対外関係を築き、より多くの貿易を成立させ、技術協力などをしていくことが、ロシア経済を安定的に維持するカギとなる。

 それではプーチン外交はどのようなものとなっていくのだろうか。ここ数年、APECやソチ五輪の開催をはじめとした、国際的な大行事が目白押しであることからも、国内外の安定を維持することが極めて重要な課題となっているということを大前提だ。なおかつ地域的にみると、大きく分けて(1)欧米との関係安定、(2)中国への警戒を強める一方、アジア重視、(3)旧ソ連諸国とも良好な関係を維持しつつ、メドヴェージェフ時代の武力的脅迫より、ソフトパワーを意識した政策、という柱が立つのではないかと思う。

 まず、欧米との関係については、国内のナショナリズムを維持するためにも、ミサイル防衛問題などの諸問題を時折ちらつかせながらも、基本的には安定的関係を維持しつつ、政治経済のみならず、エネルギーや軍事部門などでの協力深化を模索していくことになるだろう。

 一方、ヨーロッパの経済情勢が極めて悪化していることもあり、外交はむしろアジア重視にシフトしていくと思われる。ロシアにとって、中国の存在は極めて脅威である。中国は、近年世界中に進出し、ロシアの「近い外国」である中央アジアでも大きな影響力を行使している。中東問題などでは同じ方向を向いているとはいえ、中露間には様々なしこりがあり、天然ガスの価格交渉なども進展せず、関係は緊張している。昨年、ロシアが北朝鮮との関係を急に深化させていったことの背景にも対中対策があると考えて良い(参考:拙稿「ロシア外交で漁夫の利を得る北朝鮮」)。

北方領土は2島返還が前提か

 他方、貿易やエネルギー輸出の相手としても、アジアの方が現在は大きな潜在性を持っている。また、日本とは技術協力でも関係を深めていきたいはずである。それは、エネルギーに依存した経済体質から脱皮を図る上でも重要だ。

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