2024年5月15日(水)

WEDGE REPORT

2021年1月6日

 中国市場に参入を目指す外国企業は、短期的には莫大な利益を上げる。だがいったん知財、製造技術ノウハウを移転してしまうと、そこから先は、中国企業が政府からの支援や安い労働力を用いて、同じ製品をより安価で製造して世界市場にダンピングしてでも売り込むため、自社の市場シェアが減ることになる。そのため多国籍企業の多くが中国市場におけるシェアを失うか、活動を停止することを余儀なくされている。

 「中国製造2025」によって中国経済は海外から移転された技術にその成長の大部分を依拠して加速させ、最終的には世界経済の新たな分野で圧倒的優位に立つことで、軍事面でも経済面でも優位に立つことを目指している。

 国家の再生と「中国の夢」を実現するための中国共産党の努力は、一帯一路イニシアチブの下で一つになった。中国はインド太平洋、ユーラシア大陸およびそれ以外の地域で総額1兆ドル以上のインフラ投資を呼び掛けた。

国家の再生と「中国の夢」
一帯一路の真実

 このイニシアチブは、発表された当初こそ、経済成長への契機及びインフラ改善の必要性を満たす機会としてとらえた各国から熱い支持を得たが、2年前頃には中国共産党による投資には多くの紐がついており、特に、維持不可能な債務と腐敗にまみれたものだということを多くの国が理解した。

 中国共産党により統一された戦略の下では、経済的動機は戦略的構図と不可分の関係にある。一帯一路プロジェクトの目的は、対象国の政府に対する影響力を増すことで、「中華帝国」を交通や通信のネットワークのハブに据えることにある。新規の、あるいは既存のものを拡大した陸上交通や海上輸送網によって、中国にはエネルギー・原材料が運びこまれ、中国製品がより輸出しやすくなる。

 このようなルートが多ければ多いほど、マラッカ海峡(インド洋と太平洋を結ぶ主要海上輸送ルート)のような重要な海上交通の要となる地点で、米国その他の国により物資の流れが妨害されるリスクをかなり抑えることができる。こうした戦略上の鍵となる場所での優位性を確保するため、中国共産党は投資や債務を、「中華帝国」と現代の属国の間の朝貢関係構築のために利用している。

 軍民融合は中国企業の利用を超え、通常とは異なる「努力」を含んでいる。国家安全部によるサイバー窃取や、中国外交団の一員による情報活動などのような、これまで行われてきた活動に加え、米国その他の諸外国における大学や研究所に籍を置く中国人留学生や研究者に、技術情報を窃取する任務を与えている。

 軍民融合路線の下、海上、宇宙、サイバー、生物学、人工知能(AI)、エネルギーといった分野で移転された技術や窃取された技術は人民解放軍に迅速に引き渡されている。また軍民融合路線は、国有企業や民間企業に、企業買収ないし、先端技術を扱う企業に対して強くものが言える立場に立つよう奨励し、これらの技術が経済面だけではなく軍事や情報活動の面でも中国が優位に立つように活用されることを目指している。


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