2024年5月19日(日)

中東を読み解く

2020年12月24日

政界再編の“台風の目”

 今回の予算案をめぐってはネタニヤフ、ガンツ両氏が21日、連立政権を崩壊させないために、成立期限を10日間延長することでいったんは合意した。しかし、「青と白」の内部から首相に妥協することに批判が噴出したため、ガンツ氏が首相に新たな要求を突きつけ、土壇場で再び紛糾していた経緯がある。

 イスラエルのメディアによると、この造反劇は大規模な政界再編の一環であることが濃厚だ。その“台風の目”は今月、「リクード」の国会議員を辞任したギデオン・サール元教育相だ。サール氏は昨年12月の「リクード」の党首選に出馬し、ネタニヤフ首相に敗れた人物だ。だが、その後もネタニヤフ批判を強め、国会議員を辞任した後、新党「新しい希望」を立ち上げた。

 サール氏はネタニヤフ氏の支持基盤でもある保守派からの支持を受けており、今回の予算案阻止にも「積極的な役割を果たした」(エルサレム・ポスト)という。首相に造反した有力議員もサール氏の意を受けての行動だったと見られ、「新しい希望」に加わって、選挙に出馬する見通しだ。

 最新の世論調査によると、「誰が次の首相にふさわしいか」という質問には、39%がネタニヤフ首相を、36%がサール氏を挙げている。また選挙の予想では、首相の「リクード」が28議席を獲得する見通しなのに対し、サール氏の「新しい希望」と、ベネット元国防相の率いる政党が合わせて33議席を獲得すると予想されるなど、首相の思惑からかけ離れたものになっている。

 ネタニヤフ首相の汚職裁判が始まれば、首相のイメージが大きくダウンすることも予想され、政界再編が急速に進む可能性が高い。はっきりしているのは首相の甘言に乗って連立政権に走ったガンツ氏の政治生命がほぼ尽きたということだろう。「青と白」の獲得議席予想は4~5議席。統合参謀本部議長を務めた軍人には権謀術数渦巻く政界の水は合わなかったのかもしれない。

  
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