シャープとQセルズはなぜ負けたのか
韓国資本に買われる欧米太陽光企業


山本隆三 (やまもと・りゅうぞう)  常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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100年前の1912年9月15日にシャープの創業者早川徳次は金属加工業を開業した。そして、ちょうど10年前の2002年9月10日、シャープ(株)は三重県亀山工場の起工式を行った。工場は2004年の1月から世界初の大型液晶テレビの一貫生産工場として稼働を開始した。世界の亀山と銘打ったシャープの高品質液晶テレビ「アクオス」シリーズは一時代を作った。しかし、昨年からシャープの業績は急速に悪化し、今年の8月には長期格付け、短期格付けは「投機的」にまで下落した。借り入れのため事務所、工場を担保に差し入れたとも報道されている。

 そのシャープと5年前に太陽電池市場でシェア世界一を争っていたドイツQセルズは、今年4月に倒産し8月には韓国企業に買収されることが発表された。今後は韓国資本の下で立て直しを図ることになる。シャープとQセルズの事業を眺めると、規模は異なるものの共通点も多いことに気がつく。シャープもQセルズのようになってしまうのだろうか。

シャープの過ちは何か

 シャープは何を誤ったのだろうか。テレビ、液晶への依存度が高く、液晶価格の下落により収益力がなくなったと言われているが、数字でもそれは明らかだ。2012年3月期の売上高は2兆4559億円であり、11年3月期の売上高3兆220億円から、5663億円減少している。前11年3月期のテレビと外部への液晶の販売はそれぞれ8036億円、6144 億円だった。12年3月期にはテレビと液晶の売り上げは、それぞれ5814億円、4220億円に落ち込んだ。11年3月期には合わせて売上高の47%を占めていたが、41%にまで減少している。

 売上高の大きな減少は固定費を賄うことができず損失につながる。11年3月期にはAV・通信機器、液晶部門は合わせて578億円の営業利益を上げていたが、12年3月期には484億の損失を出した。太陽電池部門も220億円の赤字だ。情報機器などでこの赤字額を埋めることができず、全体でも376億の営業損失(純利益は3761億円の赤字)となった。

 シャープ不振の原因に過大な投資がよくあげられているが、投資額だけを見るとそれほど過大とは言えない。2008年3月期からの5年間のキャッシュフロー額をみると投資に1兆2750億円使われているが、営業からのキャッシュフロー額は9060億円ある。12年3月期の赤字がなければ、自己資金で投資はほぼ賄えていたことになる。

 問題は、投資の大半がテレビ、液晶製造部門に費やされ、テレビと液晶部門に収益を依存する構造になったことだ。価格競争力のある新興国の製品が登場すると、その収益力が一挙に失われ、短期間で危機的な状況に陥ってしまった。

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著者

山本隆三(やまもと・りゅうぞう)

常葉大学経営学部教授

住友商事地球環境部長等を経て現職。経済産業省地球温暖化対策技術普及等推進事業審査委員会、東京商工会議所エネルギー・環境委員会委員などを務めている。近著に『電力不足が招く成長の限界』(エネルギーフォーラム)。

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