企業誘致のため多くの地方自治体が数十億円にものぼる補助金を用意し、競い合って上限額を吊り上げてきた。長引く不況の影響で税収が落ち込むなか、消耗戦の様相を呈している。全国の自治体の先駆けとなって、90億円もの大型補助金で2004年にシャープ亀山工場を誘致した三重県。「亀山方式」とまで呼ばれ全国から賞賛されたが、全国横並びの企業誘致策から転換を図ろうとしている。鈴木英敬三重県知事にこれからの企業誘致のあり方について聞いた。
――なぜ、これまでのような大型補助金による企業誘致策を転換するのですか。
鈴木英敬知事(以下鈴木知事):税収が減り財源が限られるなかで、補助金だけに頼った企業誘致策は限界に来ています。これまでの量産型加工組立工場は、高度な製品であってもより安く作ることが求められ、日本全体で六重苦と言われる状況では、企業側も国内にとどまって今まで以上にコストを削減するのは難しい。
――またシャープのような大型の立地案件があったら誘致しますか。
鈴木知事:旧来型の企業誘致はしませんが、対象とやり方を変えて誘致します。これからは簡単には県外に出ていかない研究開発や量産試作を行うマザー工場を誘致していきます。
外資系企業の誘致も積極的に行います。昨年には、投資額が150億円になるフランスの断熱材メーカー、マグ・イゾベールの誘致にも成功しました。企業誘致策が似通った複数の自治体と競い合いましたが、三重県は製造を支える中小企業が集積していること、西日本向けのマーケットが近いこと、何より先方のニーズに県がすばやく対応したことで差別化を図ることができました。1億円の土地の値下げ相談がありましたが、翌日には対応すると電話で即答しました。
――企業誘致のやり方はどのように変えるのですか。
鈴木知事:最初に補助金を交付するのではなく、県に一度入った税金を企業にキャッシュバックするようなやり方で企業活動のフロー部分を支援することを検討しています。また新規立地だけでなく、1回の投資で補助金の支給要件を満たすことができなくても累計で満たせばよいとする「マイレージ制」を導入して、県内にすでに進出している工場のマザー工場化や再投資を支援することも考えています。