オトナの教養 週末の一冊

2012年9月28日

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東嶋和子 (とうじま・わこ)

科学ジャーナリスト・筑波大学非常勤講師

元読売新聞科学部記者。フリーランスで環境・エネルギー、医療、生命科学、科学技術分野を中心に、科学と社会のかかわりを取材。主著に『名医が答える「55歳からの健康力」』(文藝春秋)、『人体再生に挑む』(講談社)など。新著に『水も過ぎれば毒になる 新・養生訓』(文春文庫)

 東日本大震災と福島第一原子力発電所事故以来、「リスク」とどう向き合うか、という議論が盛んになっている。

 どんな道具にも科学技術にも、ベネフィットがあると同時にリスクがある。自明のことだが、人びとがそれらの大きさを正当に認知しているかというと、そうではないことのほうが多い。

 感情やマスメディアの影響などさまざまなバイアスがはたらくうえ、その技術や事象に精通しているかどうかなどによっても、リスクの認知は変わってくる。

 実際のリスクの大きさと人びとのリスク認知が大きく乖離すると、リスク対策が十分におこなわれなかったり、逆に無駄な資源を費やしたり、という問題が起きる。

 「ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなかむつかしいものである」

 物理学者の寺田寅彦氏は昭和十年にこう書いたが、さまざまなリスクに囲まれている現代社会では、この「正当に怖がる」姿勢がますます重要になっている。

東日本大震災の経験から

『リスクの社会心理学』 (中谷内一也編、有斐閣)

 本書は、社会心理学の立場から、個人のリスクに対する反応やそれをもたらす心理学的な要因、判断と意思決定のプロセスにアプローチする「リスク認知研究」(第Ⅰ部)と、リスクに対する社会的な反応や取り組み(第Ⅱ部)とを紹介する。

 編者である中谷内一也・同志社大学心理学部教授が「おわりに」で述べているように、ほとんどの章で東日本大震災の経験が扱われている。

 地震や津波といった自然災害にどう備えるか、あるいは、科学技術のリスクをどう考えるかについて、いままさに悩みつつ対話を模索している人びとに、何らかのヒントを与えてくれるに違いない。

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