復活のキーワード

2012年10月9日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。87年日本経済新聞社に入社し、東京証券部、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務める。11年からフリーに。熊本学園大学招聘教授。近著に『国際会計基準戦争 完結編』(日経BP社)。

 工場では一度生産を止めると再スタートに時間がかかるなどロスが大きい。祝日に合わせて工場を止めていたら生産効率が大きく落ちてしまう。このため、祝日も稼働させ、従業員は交代勤務にするといった工夫をするところが増えている。ゴールデンウィークのような飛び石連休を、大工場を抱える製造業企業が連続休業にしてしまうのもこのためだ。

 小売業も年中無休が当たり前になって、交代制でシフトを組み、休みを取るケースが増えている。市役所なども土曜日に開庁する自治体が増えている。全国民が一斉に休む日、というのはもはや幻想かもしれない。

労働時間ではなく質に違いがある

 ドイツ人学生に「生産性が低いのでは」と言われた頃、日本の1人当たり名目GDPは世界6位。主要国としては米国に次ぐ2番目で、当時のドイツは18位だった。その後の日本は、労働時間が短くなるのと時を同じくして、GDPは頭打ちとなっていった。働く時間が短くなって、生産性も落ちたのである。

 11年に1人当たり名目GDPで日本は18位に転落した。ドイツは20位だった。GDPの国際比較はドル建てのため、日本は大幅な円高になっているため換算すると見た目が良くなる。それぞれの通貨で過去と比較すると、日本の11年の1人当たり名目GDPは366万円と四半世紀前の1.3倍に過ぎない。これに対してドイツは3万1436ユーロと25年間で2・4倍に拡大している。

 長期休暇を楽しみ、さらに労働時間短縮を進めているドイツの方が、1人当たりGDPの伸び率が高いというのは何を意味しているのだろう。単に労働の時間量ではなく、労働の質、つまり働き方に大きな違いがある、ということではないか。

 10年前に欧州に赴任した頃、ドイツ人銀行家に「日本の銀行員は1日に何時間働いているか」と聞かれたことがある。「多い人は12時間以上でしょうね」と言うと、それは不可能だ、という。「集中して仕事をしたら12時間なんて働けるはずがない」というのだ。暗に“労働の質”に違いがあるのではないか、とほのめかされた。

 かつて大ヒットした「リゲイン」のCMソングが、今年復活した。往年のメロディーに乗せる替え歌を募集したのだ。「24時間戦えますか」というかつての名キャッチコピーの部分には「力を合わせ前に進もう」といった文句が当てはめられていた。もはや長時間労働=元気とするムードは日本社会から消えた、ということだろうか。

 バリバリ働きさえすればいい、という段階を踏み出したように見える日本。休むときは大いに休み、働く時は大いに働く。そんな生産性を上げる効率的な働き方を追求する時代が来たのかもしれない。

◆WEDGE2012年10月号より

 

 

 

 

 

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