中国はいま某国で

2012年10月15日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

 アイスランドと中国の相思相愛状態は続き、この夏一層の深化をみた。

アイスランド大統領が中国を褒めちぎる

 8月17日、アイスランドのオーラブル・ラグナル・グリムソン大統領は、首都レイキャビクのアイスランド大学が中国人学者を招いて開いた第2回中国・アイスランド北極シンポジウムに現れた。閉会の辞を述べ、中国を絶賛して、万雷の拍手に迎えられた。

 両国接近のなれそめはリーマン危機だった。北極海の小国が資金難に面した機をとらえた中国は、中央銀行同士の関係を打ち立てた。いざという時は中国人民銀行が、アイスランドの資金繰りを助ける約束へとつながった。

 もっと長期の計画もあったことがすぐ判明した(小欄2010年10月号既報)。北極航路の本格開拓を両国共同のもと進めようとするもので、北京が北極海に寄せる強い関心が世間に知られる端緒となった。

 アイスランドとは中国にとって、西側自由主義陣営に初めて築いた足がかりであり、北極開発の相手方だ。

 アイスランドはNATO(北大西洋条約機構)の成員だ。しかし自国軍をもたず、安全保障をすべて米国に委ねている。昔なら米国の保護国扱いされただろう国を北京は取り込んだ。

 前出の会合当日、中国の第5次北極探査で訪れた砕氷船「雪龍」が、レイキャビク港の岸壁にあった。大統領によれば、胡錦濤・中国国家主席にじきじき依頼し、寄港を要請して実現に至った公式訪問だった由。能動的だったのはアイスランド側のようだ。

 くだんのシンポジウムとは極地気候の変化とその影響をめぐるもので、中国からは中国極地研究中心、第一海洋研究所の研究員たちが参加した。北極航路に対する中国の動きを見るうえで、いずれも重要な国家機関である。

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