チャイナ・ウォッチャーの視点

尖閣烈々 日本の誤算 中国の思惑
主張認識の譲歩案も

森 保裕 (もり・やすひろ)  共同通信論説委員兼編集委員

1957年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。81年共同通信入社。91~95年北京支局記者。98~2001年中国総局長、05~08年台北支局長を経て現職。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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日本は準備不足
中国側の理解得られず

 日本政府は国有化に先立って、中国の反応をシュミレーションして周到な対策を講じ、中国が過激な行動に出ないよう理解を求めるべきだった。結果をみる限り、準備は不十分で、中国側の理解は全く得られていなかった。

 中国指導部は国有化について「実効支配の強化」と決めつけ、「都の購入を阻止した」と説明しても聞き入れようとしない。「野田首相と石原知事は裏で共謀して、二人羽織を演じている」(外交筋)という中国側の疑念までがもれ聞こえてきた。

 中国外交学院の周永生教授は共同通信のインタビューに対し「石原知事は地方の首長に過ぎず、日本政府は国有化しなくても都の購入を阻止できたはず。そうしなかったのは内閣支持率や選挙への影響を恐れたためだろう」との見方を示した。

打ち消される穏健派の声
タカ派の主張一色

 中国政府内では「都購入よりはましかも知れない」と国有化に一定の理解を示す穏健派の声は完全に打ち消され、歴史問題とリンクさせて国有化を真っ向から非難するタカ派の主張一色となった。

 中国側の対抗措置は(1)地上戦(反日デモ) (2)海上戦(尖閣周辺への監視船派遣) (3)経済戦(経済・貿易面の嫌がらせ) (4)文化戦(日本関係の書籍の販売停止) (5)心理戦(日中交流の凍結) (6)情報宣伝戦(中国内外での反日宣伝)――と多岐に渡った。

対抗措置は総合的

 2年前の中国漁船衝突事件の際、中国当局はなりふりかまわず、発作的、衝動的ともいえる対抗措置を講じた。中国人船長が日本の法律で裁かれることを恐れて船長の即時釈放を求め、中国で日本人会社員4人を拘束して“人質”に取った。

 それに比べ、今回の対抗措置は総合的、計画的であり、日中対立の長期化も視野に入れた周到さがうかがえる。今年春には亡命ウイグル人組織の代表大会が東京で開かれた。中国側は「日本政府は会議開催を容認してウイグル独立運動を支持するのか」(外交筋)と強く反発した。

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森 保裕(もり・やすひろ)

共同通信論説委員兼編集委員

1957年生まれ。早稲田大学第一文学部卒。81年共同通信入社。91~95年北京支局記者。98~2001年中国総局長、05~08年台北支局長を経て現職。

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