日本政府が9月11日に尖閣諸島を国有化して1カ月。29日には日中国交正常化40周年を迎えたが、主要な記念行事は中止。今、両国は尖閣諸島の領有権をめぐって激しく対立し、日中のネットや一部メディアには「戦争」というきな臭い言葉さえ飛び交う。
11月8日からは、5年に1度の中国共産党大会が開かれ、習近平氏をトップとする党新指導部が誕生する見通し。中国指導部がこの時期に態度を軟化させるとは考えにくく、日中対立の長期化は必至だ。
中国は尖閣国有化について、なぜにここまで激しく反発しなければならないのか。日本の誤算と中国の思惑を検証し、今後の問題解決の道筋を考えてみたい。
誤算認めた野田首相
「国有化により一定のハレーション、摩擦が起こることは考えたが、規模は想定を超えている」。野田佳彦首相は9月19日夜の民放テレビ番組で、中国での反日デモについて読み違いを認めた。
尖閣をめぐる日中対立の発端は、4月に石原慎太郎東京都知事が都の尖閣購入を打ち出したこと。野田首相は反中国的な石原氏の手に渡るより「平穏かつ安定的に維持管理できる」と考え、国有化に踏み切った。
早期国有化の背景には、都と競合する中で地権者が契約を急いでいたという裏の事情や、新指導部が発足する共産党大会の後まで問題を積み残さない方が日中関係に与える打撃は小さいとの日本政府の読みがあった。
歴史的にも最悪のタイミング
しかし、結果からみて、判断は間違っており、国有化のタイミングもやり方も最悪だった。
野田首相が国有化方針を公表したのは、1937年に日中両軍が衝突した盧溝橋事件(中国名、七・七事変)が起きた7月7日。国有化実施は、、31年に満州事変勃発の発端となった柳条湖事件(中国名、九・一八事変)が起きた9月18日のちょうど1週間前。歴史的に敏感な日を避けようという心配りも足りない。
また、国有化決定は野田首相がロシア極東ウラジオストクで中国の胡錦濤国家主席と会談したわずか2日後。「中国国民はメンツをつぶされたと感じた」。唐家璇・中日友好協会会長は9月下旬に訪中した河野洋平前衆院議長らに怒りをあらわにした。