2024年12月4日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年10月11日

国民のナショナリズムをあおる指導部
暴徒化と規制

 一方、中国指導部は国内メディアを通じて尖閣国有化を激しく批判し、国民の狭隘なナショナリズムをあおっている。その結果、9月15日には北京や上海、重慶など中国の少なくとも57都市で反日デモが起き、計8万人以上が参加した。

 暴徒化した一部デモ隊による日系企業や日系店舗への襲撃が相次ぎ、山東省青島ではパナソニックやスーパー「ジャスコ」など約10社が破壊、略奪に遭った。

 柳条湖事件が起きた9月18日には中国全土125都市で「100万人近く」(共産党内序列4位の賈慶林・全国政治協商会議主席)が反日デモに参加。投石などで、北京の日本大使館で窓ガラス6枚、遼寧省瀋陽の日本総領事館では窓ガラス70枚が割られた。大規模な暴徒化はなかった。

謝罪の言葉なく

 前日17日付の党機関紙、人民日報は第1面に「文明と法治によって愛国の力を凝集しよう」と題した記事を掲載し、「同胞の財産に損害を与えたり、中国在住の日本人に腹いせをするのは極めて不当だ」と暴徒化を戒めていた。

 暴徒化の規制は当然のことだ。「法治国家」を標榜するなら、どんな理由があれ、日本人や日本企業に危害を与える犯罪は厳しく取り締まるべきだ。

 中国外務省の洪磊副報道局長は記者会見で、暴徒化の被害について「責任は尖閣を国有化した日本が負うべきだ」と述べた後「中国は法治国家。国民に(抗議活動を)理性的で合法的に行うよう求めている」と付け足した。

対外イメージは失墜

 暴徒の被害を受けた日本企業への謝罪や見舞いの言葉はなかった。(日本企業で働く多くの中国人労働者も影響を受けただろうに…)日本政府は中国政府に対し、謝罪と暴徒の刑事処分、被害企業への損害賠償をきちんと求めるべきだ。

 執拗な対抗措置や暴徒化したデモは、中国の対外イメージを著しく傷つけ、日本や国際社会の「中国脅威論」「中国異質論」を補強する材料になるだろう。中国は狭隘なナショナリズムの扇動や、日中両国民の感情を踏みにじる対抗措置を直ちにやめ、日本政府が求める対話のテーブルにつくべきだ。


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