2024年4月29日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2021年4月28日

 今回のテーマは、「バイデン一般教書演説、力点はジョージ・フロイド警察正義法」です。ジョー・バイデン米大統領は4月28日(現地時間)、米連邦議会の上下合同会議で、今後1年間の内政と外交の方針を示す一般教書演説を行います。28日はバイデン政権発足後99日目で、100日目のイブになります。

 通常の一般教書演説は1月ないし2月に開催され、副大統領、ファーストレディ、セカンドレディ、上下両院議員、最高裁判事、閣僚並びにゲストなどを含め、約1600人が一堂に会し、そこで大統領が演説を行います。しかし、米メディアは新型コロナ対策をとるために、参加人数は約200人に制限されると報道しています。従って、バイデン大統領の一般教書演説は「コロナ対応型」の異例の演説になります。

 本稿では、バイデン氏が演説で何を語るのかについて焦点を当てます。

(AP/AFLO)

「成果」の強調

 まずバイデン大統領は一般教書演説で、ワクチン接種の成果を強調することは間違いありません。バイデン氏は昨年12月、大統領就任(21年1月20日)から100日間で1億回分のワクチン接種を達成するという大胆な目標を設定しました。ところが、就任後わずか58日でこの目標を到達しました。

 そこでバイデン大統領は、就任100日間で2億回分のワクチン接種を行うという新たな目標を立てたのです。この目標も就任92日目で達成しました。「数値目標」と「スピード」が同大統領の特徴であり、強みにもなっています。

 現在バイデン政権は医療従事者に加えて、学校の教職員及び通学用バスの運転手や保育士まで、接種対象者の優先順位を広げました。ドラッグストアーにおいてもワクチン接種を可能にしました。バイデン大統領は、「シャンプーや歯磨き粉を買いに行ったらワクチンを接種してください」と、自ら呼びかけています。

 さらにバイデン氏は、従業員に有給休暇をとらせてワクチン接種をさせた500人以下の中小企業及び非営利団体を対象に、米国国税庁(IRS)が有給の費用の返済を、税控除を通じて行うと発表しました。従業員がワクチン接種をして副作用が出たために有給休暇をとった場合も、IRSがその費用を税控除で補助するというのです。このようにバイデン氏はワクチン接種を拡大する固い決意を示しています。

 米ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査(21年4月18~21日実施)によれば、米国民の64%がバイデン大統領の新型コロナ対策を支持すると回答しました。同調査では、米議会で法制化された1.9ドル(約205兆円)規模の追加経済支援法案(通称「米国救済計画」)に関して、65%が支持すると答えました。加えて、52%がバイデン氏の経済政策に支持表明をしています。ワクチン接種と米国救済計画は、バイデン氏の就任100日における顕著な業績として米国民から評価されています。

何を「セールス」するのか?

 バイデン氏は米国民と上下両院の議員に対して、一体何を「セールス」するのでしょうか。一般教書演説の場を活用して2兆ドル(約216兆円)規模のインフラ投資法案(通称「米国雇用計画」)及び、法人税増税のセールスを行うことは確かです。

 インフラ投資法案について、バイデン氏は米議会と協議し、支出額について妥協する準備ができているとも述べるでしょう。上で紹介した米ワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査では、米国民の52%がインフラ投資法案、58%が法人税増税を支持しており、バイデン氏に追い風が吹いているといえます。

 米ワシントン・ポスト紙は一般教書演説で、「米救済計画」と「米雇用計画」に続いて、バイデン氏が「米家族支援計画」を発表すると報じました。3つ目の「ビッグプラン」になります。

 1.8兆ドル(約195兆円)規模の米家族支援計画には、保育無償化並びに単科大学授業料無償化等が含まれています。明らかに、民主党リベラル派のバーニー・サンダース上院議員(東部バーモント州)及びアレキサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員(東部ニューヨーク州第14選挙区選出)等に対してアピールする狙いがあります。

 結局、バイデン氏は3つの「ビックプラン」で巨額の財政出動をするわけですが、米国民の連邦政府に対する認識の変化が同氏に有利に働いています。米ワシントン・ポスト紙とABCニュースの共同世論調査によれば、48%が「小さな政府」、45%が「大きな政府」を支持すると回答しました。「小さな政府」と「大きな政府」の支持率が拮抗しています。オバマ政権時代に行った同調査(12年8月22~25日実施)では、56%が「小さな政府」支持、38%が「大きな政府」支持で、前者が18ポイントも上回っていました。

 新型コロナ感染拡大とそれに伴う急激な経済状況の悪化で、米国民の政府に対する認識が変化し、彼らは「自助」よりも「公助」を求めているといえます。


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