渡辺将人の「アメリカを読む」

2012年10月17日

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渡辺将人 (わたなべ・まさひと)

北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授

1975年生まれ。シカゴ大学大学院修了。米下院議員事務所、H・クリントン上院選本部、テレビ東京報道局「ワールドビジネスサテライト」、政治部記者、コロンビア大学、ジョージワシントン大学客員研究員を経て現職。専門はアメリカ政治。著書に『分裂するアメリカ』『オバマのアメリカ』(ともに幻冬舎新書)、『評伝バラク・オバマ』(集英社)、『見えないアメリカ』(講談社現代新書)、『現代アメリカ選挙の集票過程』(日本評論社)、共著に『オバマ政権のアジア戦略』(ウェッジ)、『オバマ・アメリカ・世界』(NTT出版)など。

 2012年8月末、華やかに行われた共和党大会の裏で、共和党内では深刻な異変が生じていた。ポール派による代議員の「乗っ取り」による、ロムニー指名の妨害行為である。

激戦州フロリダ州で行われた共和党大会

 フロリダ州タンパでの開催はハリケーン・アイザックの接近で波乱の幕開けとなった。党大会の開催地として、タンパは興味深い選択だった。タンパの非ヒスパニック系白人は人口の約半分。25%強を占めるアフリカ系のほかキューバ系移民の多さでも知られる。1890年代にタバコ産業に職を求めてキューバ移民が押し寄せたのでタンパ周辺にはキューバ料理、スパニッシュ料理の老舗が集う。ヒスパニック票へのメッセージとしては面白い選択だった。しかも、激戦州のなかでも共和党にとってフロリダは要の州となる。

 しかし、2012年共和党大会は混乱も予想されていた。1つは反共和党デモである。ミネソタ州セントポールの2008年大会では、イラク反戦団体が会場を延々と取り囲むデモを行ったが、今回も「オキュパイ・ムーブメント」(共和党大会を占拠せよデモ)が来襲するのではないかと懸念された。1968年のシカゴでの民主党大会は、ヴェトナム反戦デモの場と化して大量の逮捕者を出したが、その再燃を懸念する声すら共和党内にはあった。

 しかし、意外にもリベラル側のデモは、小規模で限定的だった。勿論、興味深い動きとして、民主党とオバマ陣営の有力者がタンパ入りし、「カウンター・コンベンション」と称してロムニー批判の記者会見を開催するなどがあった。オバマ陣営全国共同副議長のディック・ダービン連邦上院議員、ジャン・シャコウスキー連邦下院議員などのオバマをシカゴから支える後見人達のほか、民主党全国委員会委員長のデビー・ワサーマン・シュルツなどがタンパに顔を揃えた。しかし、いずれも穏健な政治イベントだった。むしろ、ロムニー陣営にとっての深刻な問題は、共和党内部にあった。

激戦州アイオワ共和党を乗っ取ったロン・ポール派

 アイオワ州は、大統領選挙での指名獲得競争1州目のアイオワ党員集会で知られるが、オバマとロムニーの勝敗を決する本選の激戦州の1つでもある。同州は日米姉妹都市の草分けとして日本の山梨県と姉妹関係にもある。

 2007年にアイオワ大学に学術シンポジウムで訪れて以来、筆者も地元の民主党・共和党の政治関係者と交流を重ねてきた。同州のテリー・ブランスタッド知事は、筆者がアイオワを訪れるたびに気さくに応じてくれる。2007年から2008年にはアイオワ党員集会と各陣営のキャンペーンを追い、2011年以降は地元のティーパーティ運動と共和党を主な対象に全州を調査してまわり、2012年共和党党員集会にも準備から当日まで2008年同様に参加した(『オバマのアメリカ』幻冬舎新書、参照)。

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