安保激変

2012年11月15日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 11月6日に実施された米国大統領選挙ではオバマ大統領が再選された。選挙直前まで、オバマ大統領とロムニー元知事の支持率の差が1ポイントあるかないか、という大接戦であったこともあり、「一般投票(popular vote)」ではロムニー氏が、「選挙人投票(electoral vote)」ではオバマ大統領が勝つという、2000年大統領選挙のときと似たようなねじれ現象(注:2000年は、ゴア元副大統領が一般投票で過半数を取ったものの、選挙人投票はブッシュ前大統領が制した)が起こる可能性があるとも言われていたが、蓋をあけてみると、選挙人数はオバマ303対ロムニー203、と100人の差をつけての勝利、ロムニーが勝つかもしれないといわれていた一般投票も、2.5%という僅差ではあるが、オバマ大統領が制した。

 既に2期目に向けて走り出したオバマ政権だが、今回の再選は、米国の今後4年間の方向性にどのような意味を持っているのだろうか。

国内課題が最優先

 2期目のオバマ政権の最優先課題は何だろうか。再選を決めた後、7日未明に行われたオバマ大統領の勝利演説が何らかの示唆を与えてくれるとするならば、オバマ政権2期目の焦点は国内問題になる可能性が高い。勝利演説の中でオバマ大統領が触れた問題――雇用、財政赤字削減、移民制度改革、税制改革――は全て国内向けアジェンダだ。

 無理もない。大統領選期間中を通じて、数ある政策問題の中で、有権者が唯一、ロムニー候補にオバマ大統領よりも高い評価を下していたのは「経済政策」だった。改善されてきたとは言え、失業率はまだ8%スレスレという高いところで推移を続けている(投票直前に発表された雇用統計によると10月末時点での失業率は7.8%である)。新規雇用の面では、堅調な伸びが続いており、10月も17万人が新たに就業したというデータがある。数字だけ見れば景気は緩やかな回復基調に入ったといえるのだが、一般の市民がはっきりと「生活が少し楽になった」と実感できるような状況ではない。

 加えて、国家財政赤字をいかに解消するかという問題が喫緊の課題として重くのしかかっている。昨年8月にオバマ政権と議会が達した当面の妥協の産物である「予算制限法(Budget Control Act)」の期限は今年の12月末で切れる。ホワイトハウスと米議会の財政再建策を巡る交渉が年末までに妥結する可能性を悲観した株式市場が値下がりする反応をしていることから見ても、楽観視ができない状況であることが分かるだろう。国防産業では既にレイオフに向けた準備も始まっており、今月中旬までに交渉が妥結する可能性が見えない場合、「肩たたき」が多くの国防産業で始まるという。

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