安保激変

2012年12月25日

»著者プロフィール
著者
閉じる

辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター主任研究員

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 日本時間2012年12月12日午前(米国東部時間2012年12月11日夜)、北朝鮮が人工衛星光明星3月2号機を搭載していたといわれるロケット銀河3号の打ち上げ実験を行った。同日中に北米航空宇宙防衛司令部(North American Aerospace Defense Command; NORAD)は、北朝鮮が打ち上げた銀河3号は、人工衛星を軌道に乗せることに成功したと判断する旨の声明を発表した。

 今回の実験の成功により、北朝鮮は自力で開発したロケットによる人工衛星打ち上げに成功した世界で10番目の国になった。しかし、北朝鮮のロケット開発は、同国の弾道ミサイル開発と表裏一体であると考えられている。このため国際社会はすでに、北朝鮮に対してミサイル発射を自制するよう求め、国連安保理決議を1718号と1874号の2つを可決している。12日の実験以降、米国、日本、韓国は、北朝鮮によるロケット打ち上げはこの2つの安保理決議違反にあたると主張、強い内容の安保理決議を採択することを主張している。しかし、中国やロシアがそのような措置に難色を示していることから、安保理での議論は本稿執筆時点では、まだ平行線をたどっており、着地点は見えていない。

あまり話題にならなかった今回の実験

 実は、北朝鮮による今回の実験は、アジア政策専門家の間を除いてはそれほど話題にならなかった。例えば、実験から一夜明けた12日付のワシントン・ポスト紙のハードコピーの方には、締切との関係からかもしれないが北朝鮮のミサイル実験に関する記事は見当たらなかった。13日以降も、実験そのものについてはAP電など通信社発の記事の転載が中心で、独自の分析記事などは殆どなかった。

 テレビでも、特に北朝鮮問題が大きく取り上げられている印象はない。国際ニュースでトップニュース扱いだったのは、アサド政権が抵抗勢力に対して使用するべくサリンガスを製造しているのではないかというニュースや混乱を深めるエジプトの内政状況だった。

 何より、ここにきて、オバマ政権と連邦議会が財政再建策を巡る合意に達することができない状態で、ブッシュ政権時代から設定されてきた所得税減税や失業保険給付期間延長停止などの期限が2013年1月から切れてしまうことにより、再び景気後退への懸念が報じられる、所謂「財政の崖」問題がアメリカのメディアでは最大の関心事だ。加えて、北朝鮮による実験と同じ11日にオレゴン州ポートランドのショッピングモールで発生した銃乱射事件、12月17日朝にコネチカット州ニュータウンの小学校で発生した殺傷事件などで、北朝鮮は話題にも上らなくなった。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る