マイケル・グリーンの「安倍警戒論」批判


世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察するコラム。

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ブッシュ(子)政権下で日本とアジアの担当として活躍し、現在は米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本部長を務めるマイケル・グリーンが、12月18日付のCSISウェブサイト掲載の論説で、メディアへの広まりを見せる安倍警戒論を批判し、日本の弁護に努めつつ、他方で「地域における米国との他の同盟国との対立だけはしてくれるな」と日本に注文をつけています。

 すなわち、安倍氏が総理に返り咲くのを受けて、日本をアジアの中の「のけ者」と位置づけるような論評が多く出ているが、それは誤解を招くものだ。東南アジアの世論は一般に米国や中国よりも日本に対してより好意的だ。特に、フィリピンやベトナムは、自らも中国との海洋権益問題を抱えていることから、日本がより毅然たる態度をとることを望んでいる。

 この地域で世論が日本に対して否定的なのは中国と韓国であり、中でも、中国の対日観は韓国のそれよりもはるかに敵対的だ。日韓両国の指導者は、アジアの将来は民主主義と法の支配に依拠すべしということで概ね一致しているが、中国は、韓国に対して、アジアの真の課題は日本の軍国主義を阻むことにあると言う。韓国が中国のこうした言葉に共鳴すれば、北東アジアにおける日本の地位は弱体化し、それに伴って米国の地位も弱体化してしまう。

 他方、アジア太平洋地域は、普遍的な規範を受け入れる方向に向かって動いており、このことは、究極的には自国の将来についての中国の選択肢をも方向付けることになろう。安倍氏自身も、こうした価値を積極的に標榜してきた。こうしたアジアの勢力図の急激な変化を考えると、決定的に重要なのは、米国の同盟諸国を、地域の将来に関する共通ビジョンを軸に糾合し、民主主義に敵対する国によって権威主義の正当化に利用されかねない対立的問題に注意をそらされないようにすることだろう。また、日本の右傾化は平和と安定への脅威ではないものの、日本政府が誤った言動をすれば、米国と日本の対地域戦略は後退させられかねない。

 日本の新政権に関して言えば、イデオロギー重視から現実主義に変わる可能性が高い。安倍氏は、日本が自国周辺の安全保障問題に対処できるかどうかは、何よりも米国との強固な同盟にかかっていることをよくわかっているとも明言してきた。そうした日本に対し、同盟国として米国は、誇り高い、毅然たる、強い日本こそが米国の国益に適うということを明確にする一方、海上交通路を確保しようとする日本への支援をいっそう強化すべきだが、日本が、もし米国にとって重要な他のパートナー諸国と無益無用の摩擦を引き起こすならば、それは米国の利益とならない、と論じています。

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 この論説は、アジア研究の第一人者グリーンらしい、大局的観点に立った、極めて当を得た分析であると言ってよいでしょう。

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