安保激変

2012年12月28日

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小谷哲男 (こたに・てつお)

日本国際問題研究所 主任研究員

1973年生まれ。同志社大学大学院法学研究科博士課程満期退学。ヴァンダービルト大学日米関係協力センター客員研究員、岡崎研究所特別研究員等を歴任。専門は日米同盟と海洋安全保障。法政大学非常勤講師及び平和・安全保障研究所・安全保障研究所研究委員を兼務。中公新書より海洋安全保障に関する処女作を出版準備中。

 「危機突破内閣」を自称する安倍自民党政権が正式に発足した。経済、財政、外交、安全保障、どれをとっても日本が危機的状況に置かれている中で、厳しい舵取りを迫られることになる。

 閣僚の顔ぶれを見る限り、経済の再生に関しては重量級の側近で固め、党内ライバルにTPPや原発など難しい問題を任せていることがわかる。外相・防衛人事はやや驚きだったが、いずれにせよ外交・安全保障は官邸主導となる。

「氷を溶かす旅」の再現を望む声も…

 新政権にとって最重要課題の1つが、尖閣諸島をめぐる日中対立の管理だ。2006年に就任すると安倍首相はまず北京を訪問し、小泉首相の靖国参拝で悪化した日中関係を改善した。一部には、この「氷を溶かす旅」の再現を望む声がある。しかし、中国の国力が拡大し、当時と今では状況が大きく異なる。

 小泉政権下では日中関係は「政冷経熱」であり、中国も政治問題が経済関係の悪化につながることは望んでいなかった。このため、安倍政権ができたとき、日中関係の改善を望む期待感は十分高まっていた。しかし、今は「政冷経冷」であり、中国はあからさまに政治問題に経済を絡めるようになっている。

 そもそも、当時尖閣諸島は日中間の大きな問題ではなかった。だが、今や中国の外交姿勢は強硬になっており、9月の尖閣国有化後、毎日のように中国公船が周辺海域に現れ、領海を侵犯する頻度も増えている。最近では領空侵犯もあった。日中両国において、関係の改善を望む声が十分に高まっているとはいえない。日中双方の世論も急激な日中関係の改善は望まないだろう。

 このような状況下では、安倍首相の訪中により日中関係を劇的に改善することは難しい。それでも、日本の国益を考えれば中国との関係は安定させなければならない。

戦略環境が要請していた米中和解

 かつて冷戦の闘士の代表だったニクソン大統領は極秘裏に中国と接触し、1972年に米中和解をもたらした。それは冷戦を戦う敵同士の和解であり、驚きをもって受け止められた。だが、アメリカはベトナム戦争を終わらせて国力を回復するために、中国は対立するソ連とのバランスを取るため、お互いを必要としていた。つまり、米中和解は戦略環境が要請していたことだったのだ。

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