ベテラン経済記者の眼

2013年1月22日

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 昨年末12月26日の安倍内閣発足からもうすぐ1カ月。首相が交代するとメディアへの対応や広報の仕方も変わるため、取材者の一人として、安倍政権のメディア戦略がどう展開されるかに関心を持っていた。案の定というべきか、今回大きな変化があった。象徴的だったのは、首相官邸に詰める記者が所属する「内閣記者会」の長年の慣例を破って、新聞各紙の単独インタビューに応じたことだ。

長年の経験をふまえた巧みなメディア戦略

 総理大臣の新聞やテレビの単独インタビューは内閣記者会の取り決めで事実上、不可能だった。しかし、首相側が承諾すれば、記者会に所属しない外国の有力新聞や、国内外の雑誌などがインタビューできてしまうという矛盾が以前から指摘されていた。首相はこうした記者クラブの「自縄自縛」の状態を各社ごとに単独インタビューを受けることで突破した。

 実際、これまで読売、東京(中日)、日本経済、産経の各紙がインタビューを行った。首相側にしてみれば、各紙がそれぞれ単独インタビューなので紙面を大きく割いて扱うし、それぞれが独自の質問を行うので、それに応じる様々な首相の発言が紙面に載ることになる。インタビューに多くの時間を割く必要はあるが、共同の記者会見で新聞各紙に同じような記事が小さく載るよりはずっと効果的だ。

 首相サイドがこうしたことを実行できたのは、安倍氏が官房副長官、官房長官、そして前回の総理大臣と官邸での経験が長かったからだろう。このため取材するメディアの事情にも通じ、その影響力のみならず、弱点も知っていたからと想像する。長年の経験をふまえて巧みなメディア戦略を展開しているといえる。

特ダネを放つことの多かった報道機関を警戒

 業界の楽屋話になるが、安倍氏の取材を巡っては、メディア関係者の間では「イチ・ロク・サンケイ」という言葉がまことしやかにささやかれている。どういう意味かといえば、東京でイチとはテレビのチャンネルでNHK、ロクはTBSを指す。そしてサンケイは産経新聞のことだ。安倍氏に関連する情報に強く、これまで特ダネを放つことの多かった報道機関をさし、そしてこれからも何かスクープを放ってくるのではないか、という警戒心が込められている。

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