ベテラン経済記者の眼

2012年12月25日

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 自民党の圧勝となった衆院選が終わり、26日に安倍政権が発足する。今回の選挙戦を通じて印象的だったのは、各党・候補とも経済政策の重要性を主張していたにもかかわらず、その政策の明確な道筋を示すことや方法論の議論が展開されなかったことだ。「今回に限らず、選挙ではいつものこと」ではあるのだが、それにしても今回は言いっ放し、選挙公約に書きっ放しの無責任な主張が多かった。

注目を集める安倍総裁の金融政策

 その中で異彩を放っていたのが自民党の安倍総裁の主張する、日本銀行によるインフレ目標の設定と政府・日銀による政策協定(アコード)締結などを柱とする金融政策だった。衆院選の公示前から講演などでぶちあげ、それに呼応して株式市場や外国為替市場が反応する「安倍相場」を生み出したことから安倍氏は自信を深めた。さらに選挙の圧勝で勢いを得た安倍氏は、当選の挨拶に自民党本部を訪れた日銀の白川総裁に改めて要請し、「12月19、20日の金融政策決定会合で適切な対応をとってくれるはず」と日銀への期待を加速させた。

 当然ながら日銀の対応が注目されたが、結局、国債などを買い入れる基金の規模を10兆円増やして101兆円程度にする追加緩和を決めるとともに、安倍氏の主張に応えるために、次回1月の金融政策決定会合で物価目標を導入することを検討することになった。

 この日銀の決定を報じた12月21日の新聞各紙の見出しが微妙に分かれたのは興味深い。一番強かったのは朝日新聞の「物価『2%』目標導入へ」と決まったかのような表現。日本経済新聞は「日銀物価目標を導入 2%視野 来月決定」、毎日新聞は「日銀、物価目標導入へ」と両紙も事実上、断じた。読売新聞は「日銀物価目標2%検討」とやや弱かった。

首相の事実上の要請に応えざるをえない

 なぜこうした差が出るのだろうか。基本的には各紙とも20日午後に行われた白川総裁の記者会見をもとに原稿を書いていると思われるが、その内容の受け止め方と取材を通じた展望が見出しの踏み込みの強弱を生んだのではないかと想像する。

 筆者もかつて日銀を取材した経験があるが、それをもとに解釈すると、選挙で圧勝した自民党の総裁は現在の議院内閣制のもとでは次の首相である。首相が政府の特殊法人である日銀に事実上の要請を行えば、日銀はそれに応えざるをえない。つまり前年比上昇率2%の物価目標は設定せざるをえないし、必ずしも欧米のようなアコードではないかもしれないが、何らかの形の政策協定は結ばざるをえない。

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