2024年5月20日(月)

2021年回顧と2022年展望

2021年12月27日

 その1例として最近、大きな話題となったのが、南部オクラホマ州軍のトーマス・マンチーノ司令官の行動だった。同司令官は去る11月17日、オースティン国防長官が州兵を含む全軍兵士向けに発令したワクチン接種命令を無視、トランプ支持者であるケビン・スティット共和党州知事の意を受け「ワクチン接種の必要なし」との独自司令を州兵向けに伝達した。その理由として、「州兵は州法規定により州知事の指示を最優先する義務があるから」と説明した。

 このほか、トランプ支持者の多い同じ南部の他州でも、大統領行政命令によるワクチン接種やマスク着用義務付けに対する造反の動きが目立っており、「個人の自由か公共の安寧か」をめぐる法廷闘争では、連邦政府敗訴のケースもいくつか報じられている。

「内なる敵」にも振り回され続ける

 バイデン氏の前にはもうひとつ、高いハードルが立ちはだかる。同じ民主党ながら、ホワイトハウスの諸政策にことあるごとに難クセをつけ続ける〝獅子身中(しししんちゅう)の虫〟ジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)の存在だ。

 マンチン氏については、すでに当ウェブサイト・コラム『Washington Files』(「バイデンが最も恐れる“内なる敵”ジョー・マンチン」)でも詳述したが、政権発足当初から上院での法案審議のたびごとに、その動向が全米マスコミで脚光を集めてきた。

 上院では現在、民主、共和両党ともに50議席と勢力が拮抗、与党議員が1人だけ抜けても、法案成立が困難になるきわどい状況下に置かれている。このため、重要法案審議の際には、バイデン大統領個人も幾度となく、マンチン氏と電話のみならず直接対談、自宅へのディナー招待などを通じ、キャスティング・ボートを握る同氏の支持取り付けに追われる状況が続いた。

 結局、政権発足1年目になんとか成立にこぎつけたインフラ投資関連法も、財政赤字拡大を懸念するマンチン議員との取引の結果、当初の3兆㌦から1兆2000億㌦程度にまでバッサリ削減となり、結果的に社会的インパクトの欠けるものとなった。

 さらに、気候変動対策、児童・社会福祉充実計画などを盛り込んだ3兆5000㌦規模の歳出法案は、同議員の要求により議会審議で1兆8500億㌦まで削られたあげく、11月末までにようやく下院を通過した。だが、上院では再び、同議員がなお内容に注文をつけたため、成立のめどが立たないまま、審議は新年持越しの事態となっている。

現状から見える中間選挙の3つのシナリオ

 バイデン大統領支持率も42%台と低迷が続いている。

 その中で迎えるのが、11月の中間選挙だ。例年とは異なり、今回は政権にとっては存亡に直接関わる、最重要課題と言ってもいいだろう。

 その見通しだが、可能性の高い順に以下の3つのシナリオが考えられる。

 ①上下両院ともに共和党勝利

 去る12月18日付けの政治専門デジタルメディア「ポリティコ」の報道によると、民主党全国委員会(DNC)は同月中旬、サウスカロライナ州チャールストンのホテルに各州民主党支部の幹部を集め、中間選挙に向けた展望と戦略について非公開会合を開いた。同メディアが出席者のうちの20人近くにインタビューしたところ、大半が「下院は敗北、上院は勝つとしても大博打」との悲観的見通しを述べたという。

 同党ケンタッキー州支部長のコールモン・エルリッジ氏は「うまくいった場合でも、上院はぎりぎり多数か50議席を死守、下院は現状維持(民主221、共和213、欠員1)か、わずかの差で共和党勝利、といったところだろう。仮に共和党が下院を制したとしても、その差は20議席以内にとどまればわが党にとって御の字だ」と予測している。第二次大戦以後の中間選挙では、政権党が平均26議席失うジンクスがあることを踏まえたものだ。

 上院の場合も、歴史的に見た場合、政権与党が平均3議席減らしており、共和党が多数を奪回できる可能性は十分ある。


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