2024年5月20日(月)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2022年1月4日

 現場は混乱するかもしれないが、この即時実施ということを、いかにして短い期間で「最適解」を見出して進めるのか、米国の「管理職・専門職」にとっては腕の見せ所というわけである。

「一般職」も「働くときは働く」

 反対に、「一般職」の場合は家庭や個人の生活が中心であり、仕事ということでは組合に守られた定型業務が主となることが多い。従って「一般職」が仕事の上で「働くときは働く」というような姿勢で、「非常事態モード」に入ることはない。

 だが、こうした人々も「働くときは働く」という機会はある。それは、地域社会への貢献だ。例えば、隣町が深刻な竜巻被害にあって多くの住宅が倒壊したというようなケースでは、多くの人がボランティアに駆けつける。9時5時の仕事で基本的に残業のない「一般職」にはそうした活動が可能になるのだ。

 また、米国の地方に行くと消防組織は常設のフルタイム消防士ではなく、ボランティアに頼っている場合がある。こうした自衛消防団に積極的に参加して、毎月訓練に参加して技量を維持し、イザ火災となると現場に駆けつけるのも、「一般職」が多い。

 教会活動もそうだし、地域の少年少女にスポーツの指導を行うというのも米国では盛んである。中には必要に迫られて、2つの「一般職」を掛け持ち(ダブル・ジョブ)して、家計を支える人もいる。

 文字通り成果主義が貫かれ、その中で自分を奮い立たせる「管理職・専門職」、そして日々の業務は定型的でも、残業のないことを生かして地域貢献などに高いモチベーションを発揮する「一般職」、それぞれに「働くときは働く」カルチャーが、米国の経済社会を支えていると言っていいだろう。

 更に言えば、日本の「働き方改革」においても、真の生産性向上を目指すのであれば、単純に労働時間を削減するのではなく、それぞれの持ち場における各人の自発的なモチベーション向上をメリハリを持って進めることも必要だ。その意味で、「働く時には働く」米国の姿勢には参考となる部分は大きいと思われる。

   
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