2024年5月19日(日)

新しい〝付加価値〟最前線

2022年1月12日

超ハイクラスを狙うフィリップス

 ヨーロッパの巨人として知られるフィリップス社。「ノンフライヤー」「シェーバー」などが日本では知られるが、カバーしている分野は「照明」「光ディスク」「医療」など多岐にわたる。

 フィリップスは、ビジネスに関して、独特の目の付け方をする。「日常、常に使われて、絶対になくならないもの」をビジネスにするというものだ。「照明」「ヘルス」「医療」などがそれに当たり、それらには継続的に投資がなされる。CDからBlu-reayまで光ディスクの技術開発を手がけたフィリップスだが、初期のCDなどはともかく、00年以降は、技術を作って特許で儲けるパターンに変更している。

 本格的な超音波診断機を初め、さまざまな医療機器で医療分野に参入している一方、今力を入れているのはヘルス分野だ。「シェーバー」などの理美容家電、「光脱毛器」などのボディケア家電、そして「電動歯ブラシ」などのオーラルケア。21年は、オーラルケアにかなり手を入れて新製品ラッシュだった。

 ではマスクはどうか? このコロナ禍、フィリップスが提案したのは、「ブリーズマスク」。N95規格のフィルターを用いた、最強の電動マスクだった。

 マスクに「医療用マスク」と書かれたパッケージを見ることがある。これは「医療ルートで販売されるマスク」のことで、日本では、マスクには医療用として公式な規格はない。よく聞く「N95」だが、これは元々、米国の鉱山で粉塵に対して用いられたマスク規格のことだ。鉱山は、微粒子が舞い散る中での作業となるため、呼吸器を守ためには、このレベルのマスクが必要とされる。

 当然、医療にも用いる動きがでてくる。特に手術と感染症だ。が、微細な粉塵、ウイルスに強いということは、空気も通りにくくなり、息苦しくなる。知り合いの医者に言わせると、頭に酸素が行かないので、すぐポーッとしてしまう感じだそうだ。逆に言えば、よほど特別でないと使えないということだ。

 そこでフィリップスが作り上げたのが、「ブリーズマスク」だ。これは、セミハードシェルにN95マスクを後付けで装着し使用する。電動ファンはセミハードシェルに付いていて、空気を外に出す働きをする。空気が外に出るわけだから、新しい空気がフィルターを通して入ってくる。また、セミハードだから隙間があきににくい。要するに、呼吸のサポートをすることにより、N95フィルターを使いこなそうという発想だ。いま、世界中で売れている電動マスクとなっている。

フィリップス ブリーズマスク

日本でもようやくマスク規格決定

 この3社は家電メーカーで品質管理もしっかりしている。しかし、マスクは医療品ではないため、極端な言い方をすると、海外から適当に仕入れて、売ることもできる。このため、21年6月にマスクの品質の指標になる日本産業規格「JIS T9001」が制定された。同時にその規格の認定制度も始まった。

 これで使われるテスト内容は、ここで初めて公開されたオリジナルではない。それまでも良心的なメーカーがパッケージに表示していたPFE:微小粒子捕集効率、BFE :バクテリア飛まつ捕集効率、VFE:ウイルス飛まつ捕集効率を使ったものだ。

 JIS規格では、「PFE」「BFE 」「VFE」に加え、「花粉」「圧力損失」「有機ホルムアルデヒド」「アゾ化合物」「蛍光」の基準が定められている。「圧力損失」「有機ホルムアルデヒド」「アゾ化合物」「蛍光」の基準は絶対で、「PFE」「BFE 」「VFE」「花粉」はどれか一つ以上クリアすると、JIS認定がもらえ、どの基準を満たしているのかを、表示できるにようになった。

 ちなみに、第一号認定は、アイリスオーヤマのナノエアーマスクだった。たかがマスク、されどマスクで、官民で大きな違いがあると言えるのではないだろうか。

   
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