世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年2月7日

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 2013年1月2日付米シンクタンクCSISのサイトで、John Lee豪シドニー大学准教授は、金正恩が新年の辞で、本年を経済強国建設と人民生活向上を目指す決定的転換の年にすると述べているが、北朝鮮経済において軍が圧倒的地位を占め続ける限り、経済の改革は期待できない、と述べています。

 すなわち、金正恩は、北朝鮮の最高指導者として19年振りに肉声で新年の辞を述べ、人民生活の向上と経済建設を本年の二大目標とし、「宇宙を征服した精神と気迫で経済大国建設の決定的転換」を目指すべきであると述べた。

 このような発言を何処までまじめに受け取るべきであろうか。軍事力よりも経済成長に焦点を当てたことは結構であるが、改革の具体策は何ら示されていない。

 北朝鮮は常に経済破綻国家であった訳ではない。金日成の死後、先軍政策に基づき極端な自給体制に転じたことが惨禍を招いた。1994-98年に最大350万人に達する餓死者が出た為、北朝鮮は、国際支援に頼ることとなった。北朝鮮は、虚勢や脅しの後に国際ルールを守るという約束を繰り返して、援助を獲得している。核・ミサイル開発はこの戦略と結び付いている。

 1995年以来、北朝鮮は、米国から10億ドル以上、韓国から40億ドルの援助を得ており、推定では中国から100億ドル相当の援助を得たと見られる。この間、北朝鮮のGDPは年間400億ドル程度であった。

 軍が経済面で主要な役割を果たしていることが改革の最大の障害である。軍は北朝鮮で最大の規模と資金と能力を持つ組織である。軍は3,000の協同農場を管理・監督し、北朝鮮の農業生産の4分の1を確保している。

 軍はイラン、パキスタン、シリアにミサイルその他の兵器を輸出し、数億ドルを稼いでいる他、国の主要な鉱山の殆ど全てを経営し、マグネサイト、亜鉛、鉄鉱、タングステンの大部分を中国に輸出している。中国への鉱産物輸出額は2003年に1500万ドルであったのが、現在は2億5000万ドル前後に達している。

 改革と生活水準向上のためには、軍が農業・鉱物資源の管理権を放棄する必要があるが、鉱物資源が現行価格で5.4兆ドルに達する状況では、金正恩が先軍政策を変えることは難しい。また、軍が低賃金の兵士を労働力として使って非軍事企業を排除している状況では、低賃金労働を利用する輸出依存型のアジア的経済発展も無理である。

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