安保激変

2013年2月7日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

 オバマ政権と米議会の間で、財政再建策を巡る攻防が激化している。昨年年末の「財政の壁」問題(注:2012年12月末に予定されていたブッシュ政権時代に設定された増税の期限切れによる一般国民への増税と財政再建策が合意できないことによる連邦予算一律10%強制削減(いわゆるsequestration)開始のダブルパンチで米国経済が崖から転がり落ちるように停滞していくリスクを指摘した言葉)は1月1日に、政府予算強制削減の開始時期を2013年3月1日に先延ばしする法案が、31日に債務の上限を5月中旬まで引き上げる法案がそれぞれ成立したことで、新年早々の大混乱は免れたものの、すでに連邦政府予算10%一律強制削減発動の期限まで1カ月を切ってしまった。

 米国の財政再建策についての議論を取り巻く雰囲気はここ数カ月で明らかに変化した。昨年末までは「何がなんでもsequestrationを回避しなければ」という雰囲気がはっきりと感じ取れたばかりでなく、特に国防費については、パネッタ国防長官やカーター国防副長官が先頭にたって「sequestrationが起きると米軍の能力や抑止力にとって壊滅的な影響が出る」「軍の能力が空洞化してしまう」というメッセージを発していたことも功を奏し、政府予算削減はやむを得ないにせよ、国防費への影響は最低限にしようという雰囲気が多少なりとも残っていた。

「sequestration やむなし」?

 ところが、このような雰囲気が1月に入ってから大きく変わった。

 最大の変化は「sequestration やむなし」という雰囲気が出てきたことだ。2011年8月に予算制限法が成立した際に挿入されたsequestrationという強制措置は、政府予算を一律10%カットするという、「ヒト・モノ・カネ」すべての面において現場で大混乱を招く恐れのあるとんでもない仕組みだ。

 そもそも、この仕組みはsequestrationという措置のあまりの「トンデモナサ」が、増税に否定的な共和党と、社会福祉制度の思い切った改革などに否定的な民主党双方から譲歩を引き出すきっかけになるだろうという思惑のもとに設定された措置だった。ところが、今や「実際にsequestrationが発動されて、経済が大混乱に陥るのを目の当たりにするまでは、再生再建策を巡る合意に向けたモメンタムは生まれそうにない」という悲観的な見方が大半を占めるようになってきているのである。

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