2024年4月29日(月)

経済の常識 VS 政策の非常識

2022年3月12日

 2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵入し、市民を巻き込む無差別な攻撃を行うのみならず、原子力発電所までをも砲撃して世界を震撼させている。米国を含む北大西洋条約機構(NATO)軍は傍観し、ウクライナの人々は国を奪われようとしている。

経済的には小さいにもかかわらず、世界を震撼させる軍事行動をとったプーチン(ロイター/アフロ)

 ウクライナは勇敢に反撃し、西側諸国も武器を供与し、ロシアに制裁を課すなどの対応を取っている。ウクライナがロシア軍を撃退し、平和が戻るのを祈るばかりである。

 ここで私が疑問に思うのは、ロシアは経済的には小さな国にすぎないにもかかわらず、西側諸国の軍事的対応の不十分さにより侵攻を許してしまったことである。それがなぜなのかを経済的に考えてみたい。

 もちろんロシアは核保有国であるから第三次世界大戦を始める訳に行かない。だから西側諸国が助けるのを逡巡するというのは分かるが、それにしてもである。

ロシアのGDPは韓国並み

 ロシアの国内総生産(GDP)は20年で1.5兆ドルにすぎない(100掛けて150兆円と考えればだいたいの規模感が分かる)。図1に主要国のGDPを示しているが、ロシアはイタリアの1.9兆ドル、韓国の1.6兆ドルよりも小さい(グラフの国の順番は次の図2の軍事費の多い順である。選んだ国は21位の台湾までとロシアとヨーロッパで国境を接している国である)。

 もちろん、ドイツやフランスはイタリアより経済規模が大きい。ドイツ、フランス、イタリアのGDPを足すと8.4兆ドルとなってロシアの5倍以上となる。英国も足せば11.1兆ドルとなって、ロシアの7倍以上になる。

 日本は5兆ドルでロシアの3.4倍であり、米国は20.9兆ドルでロシアの13.9倍である。太平洋戦争開戦時、日本の経済力は米国の10分の1以下と言われていた。ロシアは、もちろん、直接米国を攻撃した訳ではないが、当時の日本以上に無謀な戦争に突き進んでいるのではないか。


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