2024年5月20日(月)

ビジネスと法律と経済成長と

2022年4月14日

 具体的には、販売先との契約により定価での販売を義務付けたり、値引き販売した店舗には商品を卸さないなどとする行為がこれにあたる。定価で販売されているかどうかを巡回チェックするような場合も、再販売価格の拘束にあたると見なされる可能性がある。

 こういった再販売価格の拘束がされると、商品の価格競争がなくなり、消費者の利益が害されてしまうというのが理由だ。

一部の店舗からでも広がってしまう値下げ

 もっとも企業側としては、できれば「定価での販売」を義務付けたいというのが本音だろう。

 一般的に、企業は自社商品が安売りされることを嫌う。商品価格を高く維持することで利益率が上がるのはもちろんだし、安売りされているということ自体がブランドイメージにとってのネガティブな要因になるというのも大きな理由だ。

 これに対して、スーパーやコンビニなどで消費者に対して大量に販売するような商品はとりわけ価格コントロールが難しい。一部の店舗が値下げを始めると、他の店舗もそれに続いてしまい、結果としてその企業の商品の価格水準が下がり、ブランド価値そのものが低下してしまうこともある。

 自社商品のブランド価値の維持・向上に心血を捧げている企業が小売店に値下げをしないよう求めるのは、心情的には無理なからぬことだろう。ブランド価値の維持を理由とした再販売価格の拘束は本当に認められないのだろうか。

 これに対しては、昔から「小売店等での定価販売を求めたとしても、競合他社同士のブランド間の競争がなくなるわけではないため、公正な競争は害されていない」という議論がある。さらに「小売店での販売価格が維持されることで、むしろブランド間の価格競争が促進され、消費者に利益のある結果になる」という意見もある。

 公正取引委員会によるガイドライン内にも、再販売価格を維持することにより逆にブランド間競争が促進されるような場合には、再販売価格の拘束に正当な理由があるとみなす余地があると読める部分もあり、いかなる場合であっても再販売価格の拘束が違法とされるわけではない。

 ただし、これまでの裁判例の大半は、実際に行われた再販売価格の拘束についてそのような効果があるとは認められないと判断している。「正当な理由」は容易には認められない。

 再販売価格が維持されることによる社会的な利益と、価格競争がなされないことによる弊害とでは後者のほうが大きいとするのが、現在の支配的な考え方だ。


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