まさに江沢民派の影響から逃れるために、習近平総書記は就任して以来、解放軍を取り込んで軍内における自分の権力基盤の強化に全力を挙げる一方、昔から「敵方」である「共青団派」との連携を模索し始めた。彼の「脱江沢民派」の動きは当然、「共青団派」からも大いに歓迎されているので、両者の連携はいとも簡単に進んでいた。
「共青団派」の首領である胡錦濤氏は自らの引退に際し、引退後も一部のポストにしがみつく江沢民氏とは打って変わって、総書記・国家主席・軍事委員会主席の全ポストを一気に習近平氏に受け継がせた。このことは、まさに習近平氏と「共青団派」との連携が成功したことの表れであろう。
そして、胡錦濤氏からの全権委譲との引き替えに、国家主席となった習近平氏は今度、「共青団派」大幹部の李源潮氏を自らのパートナとしての国家副主席に据え、もう一人の「共青団派」幹部の汪洋氏を副首相のポストに抜擢した。政治局常務委員の李克強氏も予定通り国務院総理(首相)となったから、結果としては、党の人事で大敗を喫した「共青団派」は全人代の政府人事では巻き返しを図ることに成功して、政府の中枢を掌握することが出来た。
次の党大会を見越す「共青団派」
政府人事での勝利を治めた「共青団派」はそれを足場にして、次なる天下取り戦略を描くことが出来た。彼らが今から目を向けているのはやはり、2017年開催予定の次の党大会の人事と、2018年開催予定の次の全人代人事なのである。
2017年に開催される予定の次の党大会では、今の政治局常務委員会を占めている江沢民派の面々は年齢の制限によって引退するはずである。今年66歳の張徳江氏、67歳の兪正声氏、65歳の劉雲山氏、66歳の張高麗氏の4名は5年後にはほとんど例外なく自動的に定年となる。その代わりに、今年57歳の李克強氏は当然政治局常務委員に止まり、引退した者たちの「穴埋め」として、国家副主席となった李源潮氏は年齢制限をギリギリの線でクリアして政治局常務委員に昇進する可能性が大である。今年57歳にして副首相の中で最年少の汪洋氏も政治局常務委員入りを果たす見通しである。
つまり次の党大会で、「共青団派」は一気に3名の幹部を政治局常務委員会に送り込むことが出来るのだが、勿論彼らの目論みはそれだけではない。去年の党大会において、政治局常務委員会人事で大敗を喫したものの、「共青団派」は実は、その一段下の政治局の人事では将来を見越した勝利を収めた。「共青団派」の次世代ホープの2人、弱冠50歳の胡春華・広東省党書記と、同じ50歳の孫政才・重慶党書記を政治局員に昇進させることに成功したのである。