2024年12月2日(月)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年3月21日

 今月17日に閉幕した中国の全国人民代表大会において、胡錦濤前国家主席の率いた「共青団派」という党内派閥は、去年11月開催の党大会での敗退から立ち直り人事面での巻き返しに成功した模様である。

 去年の党大会での実質上の政権交代において、党内最大派閥の江沢民派は「共青団派」を押し切って歴史的な大勝利を収めた。党の最高指導部となる政治局常務委員会の人事では、新しく選出された7名の常務委員のうち、張徳江氏(66)、兪正声氏(67)、劉雲山氏(65)、張高麗氏(66)の4名は紛れもなく江沢民派の中心メンバーであり、もう一人の王岐山氏も江沢民派に近い人物とされている。

 つまり江沢民派の面々は、党の最高指導部を完全制覇している。党のトップは習近平氏であっても、天下はまるきり江沢民派の天下なのである。

習近平氏と「共青団派」との連携

 その一方、それまで江沢民派と対峙してきた「共青団派」、すなわち共産主義青年団出身の幹部たちからなるこの派閥は明らかに、最高指導部ポストの争奪戦に破れていた。党大会開催の前に政治局常務委員会入りが確実視されていた「共青団派」のホープで政治局員・党組織部長の李源潮氏(61)の昇進が見送られて、多くのチャイナウォッチャーを仰天させた。

 「共青団派」のもう一人の若き新星である政治局員の汪洋氏(57)も一時、政治局常務委員会入りの呼び声が高かったが、結局政治局員止まりとなった。新しい政治局常務委員会入りを果たした唯一ひとりの「共青団派」幹部はすなわち今の首相の李克強氏(57)である。

 江沢民派はこれで、我が世の春を謳歌するような勢いとなっているのだが、それに対して大いなる反感を抱いているのは破れた「共青団派」だけではない。党の新しい総書記となった習近平氏も当然、江沢民派勢力に大きな警戒心を抱いているのだ。権力の中枢は江沢民派の面々によって固められたような現状下では、「習近代の時代」が永遠にやって来ないのは火を見るより明らかである。

 習近平氏にしてみれば、「共青団派」との競争を勝ち抜いて総書記の椅子を首尾よく手に入れる前にどうしても江沢民派の支援が必要だから、上述の政治局常務委員人事でやむを得ずの妥協を強いられたが、一旦党のトップの座にきちんと納まってみると、権力の中枢を牛耳る江沢民派の面々はむしろこの上なく目障りな存在となっているのである。


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