2024年11月21日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2013年3月21日

 しかしもし、「使用人」であるはずの「共青団派」の人たちがこれから本気で天下を取ろうとするのであれば、自分たち太子党こそが身を挺してそれを阻止しなければならない。そして、この共産党政権の天下をもう一度取り戻して、革命の血を受けついだ自分たちの継承権を確立していかなければならないのである。

 その一方、「共青団派」の人たちも当然、すでに目の前にぶら下がりつつある政権を太子党にお返しする気はさらさらない。「雇われ経営者」と見なされる「共青団派」」の人々は逆に、「親の七光り」を借りて威張っている太子党とは違って、自分たちこそが叩き上げの本物の国家経営者なのだ、という思いがある。

 そうすると今後、江沢民氏と江沢民派が政治の表舞台から消えていく中、特に江沢民派の面々が政治の中枢からいっせいに消える次の党大会開催までは、習近平氏の率いる太子党と胡錦濤氏の「共青団派」との間で、まさに次なる天下取りを巡って熾烈な権力闘争を展開して行くのであろう。勿論その中で、多くの重要ポストと莫大な利権を手に入れている江沢民派の人たちも、自らの生き残りをはかるためにこの政争に参加してくるはずである。

 その中で、党をおさえているのは江沢民派であり、政府の中で足場を固めたのは「共青団派」であるが、それに対して、習近平氏の率いる太子党は党と政府にはそれほどの勢力を擁していない。彼らにとって、権力闘争において最後まで勝ち抜くための砦は結局、太子党の人脈が幅広く浸透している解放軍でしかない。総書記に就任してからの習近平氏は「強軍」の路線を打ち出して軍重視の姿勢を鮮明にしていることの背後には、まさにこのような事情があるのである。

習近平が強軍路線をおし進める理由

 とにかくこのようにして、今後の中国の政治体制の中では、習近平氏の率いる太子党は解放軍を、江沢民派の面々は党の中枢を、そして「共青団派」の人々は政府部門をそれぞれの拠点にして、次なる天下取りのための三つ巴の戦いを展開していく様相である。まさに権力闘争の「新三国志」の時代の到来なのである。

 共産党政権の天下は一体誰の手に陥るのかは今の時点では知る由もない。しかもそれはあくまでも中国の内部問題であって我々には直接に関係のないことである。日本の立場から懸念しなければならないのはむしろ、自らの権力基盤強化のためにますますの「強軍路線」をおし進めていく習近平国家主席が、この巨大国を一体どのような方向へ導いて行くのか、である。この「強軍路線」は、その進めようによっては我々にとって大いなる脅威となりかねないからである。

[特集] 習近平と中国 そして今後の日中関係は?


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