今年の1月30日、中国海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制用のレーダーを照射した。この衝撃的な出来事が日本政府の発表によって知られて以来、日本国内では、「それは中国指導部の指示によるものか、それとも軍による単独行動なのか」についての議論が盛んになっている模様だ。
しかしこのような議論をするよりも、われわれはむしろ、習近平政権が発足して以来の中国側の一連の動きを連続的に捉えて、一つの全体的流れの中でこの「レーダー照射事件」の意味を考えるべきであろう。実はこのような視点から見てみると、この一件は決して単独・偶発の事件ではなく、むしろ起こるべくして起こった必然の出来事であることがよく分かる。
「民族の偉大なる復興」
去年11月に習近平政権が樹立して以来、国内的あるいは対外的に、政権は一体どのような動きを取ってきたのか。
まずは去年11月15日、習氏は総書記に就任した当日のお披露目会見で「就任演説」を行ったが、その中で彼の口から頻繁に出たキーワードの一つは「民族の偉大なる復興」であった。そして11月29日には、習氏は6人の政治局常務委員らを伴って北京市の国家博物館を訪問して中国近現代史の展覧会を参観したが、その中で彼はやはり「アヘン戦争から170年余りの奮闘は、中華民族の偉大な復興への明るい未来を示している」などと国民に語りかけた。その時の約10分の演説で、習氏は「中華民族」や「(中華民族の)偉大な復興」という言葉を合わせて20回近く連呼した。
それ以来現在に至るまで、「民族の偉大なる復興」云々という言葉は完全に習総書記自身および政権の最大のキャッチフレーズとなってしまっている感がある。この一点から見てみても、習近平政権は明らかにナショナリズムというものを全面的に打ち出し、政策理念の中核としていることがよく分かる。
尖閣上空の領空侵犯
そして去年の12月に入ると、習近平氏にはよりいっそう注目すべき動きがあった。12月8日と10日の2日にわたって、中央軍事委員会主席の彼は広東省にある「広州戦区」所属の陸軍部隊と海軍艦隊を視察した。その中で習氏は陸軍と海軍の両方に対して「軍事闘争の準備を進めよう」と指示したのと同時に、「中華民族復興の夢はすなわち強国の夢であり、すなわち強軍の夢である」と熱っぽく語り、彼自身が旗印にしている「民族復興」というスローガンの真意はすなわち「強国強兵」であることを宣した。